なぜ? 葬儀社がクリスマスケーキ講座

By 関かおり

 京都府精華町の「花駒」は11月、同社の施設に地域の人を集めてクリスマスケーキの講座を開いた。地元のケーキ店が協力し、生クリームたっぷりのケーキの作り方を伝授。講座は好評で2回開かれ、計約30人が参加したという。が、主催した花駒とは、実は同町の葬儀社。なぜ葬儀社がクリスマスケーキ講座を?

花駒(京都府精華町)が開いたクリスマスケーキ作りの講座=花駒提供

 同社の上野雄一郎社長は「ずっと住み続けたいと思える町にしたい」とイベントを開催した理由を語る。繰り返すがこの人は町長さんではなく地元の葬儀社の社長さんだ。同社は葬儀社の会員制度を利用して、町おこしに取り組んでいる。

 葬儀業界は現在、地域の過疎化と直面している。人口が減り、都会へと流れてしまえば、地元密着型の葬儀社の経営は立ちゆかなくなる。同社が拠点を置く精華町も例外ではない。「ここに住み続けてもらうためにはどうしたらいいか」。上野社長は会員制度を利用することを思いついた。

 同社の会員制度は元々、会員本人や2親等以内の親族が亡くなったとき、葬儀の代金を割引するサービスだった。しかしそのサービス内容だと、生前にはメリットがないため、自分が入会していることを忘れてしまう会員もいたという。「会員が元気なうちに、楽しいイベントを開いて、地元を盛り上げたい」。そう考え、上野社長は7年ほど前、提携店で買い物をするときに使える商品券を配ったり、店と協力してイベントを開いたりする会員向けサービスを始めた。

 11月のクリスマスケーキ講座もその一環。他にヨガ、フラワーアレンジメントなど、協力する店や時期に合わせて年に3~4回、多種多様なイベントを開いている。参加費は最低限しか徴収しないため、店にとってはほぼ赤字だが、新規客獲得のメリットがあるという。また、社会福祉協議会と協力してパネルディスカッションや講演で命の大切さを訴える会を春に、同社のホールに屋台村を出して野菜などを売るお祭りを秋にそれぞれ開催。会員以外も参加でき、毎年盛況だという。

 最初はほそぼそと始めた取り組みだったが、今ではクリーニング店、菓子店、植木屋など様々な業種の約100店と提携し、約3000人の会員がいる。年々増加しており、人気のイベントでは募集人数を遥かに上回る申し込みが寄せられることもある。上野社長は「ずっと地域に根ざしてやってきた会社なので、地元はやっぱり特別。最後までここで暮らしたいと思える町にするために貢献したい」と話している。 (共同通信=関かおり)

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