【あなたは何しに?】2017年にマクラーレンを離れた元チーム広報の新たな仕事とは

 F1シーズンを転戦していると、いろいろな人との出会いがある。そんな人たちに、「あなたは何しに?」と尋ねる連載企画。今回は2017年までマクラーレンの広報部長を務めていたマット・ビショップだ。

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 F1の最終戦アブダビGPに懐かしい顔を見つけた。マット・ビショップだ。彼は長年、マクラーレン広報のトップの座に就いていたが、昨年の7月に突然、チームを離脱。グランプリ界から姿を消していた。

 あれから約1年4カ月。スキンヘッドにサングラスという出で立ちは変わらないが、首からぶら下げているパスは、もはやマクラーレンのものではない。さっそく話を聞いてみた。

「『Wシリーズ』のコミュニケーションディレクターとして、F1のレース関係者たちに会いにきたんだ」(ビショップ)

 Wシリーズとは、2019年の5月に開幕する女性ドライバーのみで行われるレース。マクラーレンを離れたビショップはその新シリーズの広報部長的な存在として、再びレースの現場に戻ってきたのだ。

 しかし、来年の5月まではもう半年を切っている。ゼロから立ち上げられたWシリーズの開幕に向けて、いまは何かと忙しい時期だと思われるが、ビショップの顔はイキイキとしていた。それはWシリーズに携わっているメンバーと関係している。

「Wシリーズのシェアホルダーが元F1ドライバーのデビッド・クルサードと天才エンジニアのエイドリアン・ニューウェイ。そして技術面での現場責任者がデイブ・ライアン(マクラーレン、マノーの元レーシングディレクター)だからね」

「3人とも私と同じように元マクラーレンのスタッフで、かつては一緒に仕事していた仲なんだ。事務所がロンドンにあるから、イギリス人のほうが集まりやすいという面もあるね」

 ところで、Wシリーズとはどんなレースなのか。コミュニケーションディレクターのビショップにもう少し聞いてみた。

「Wシリーズは2019年はDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)のサポートレースとしてヨーロッパで6戦が開催される予定となっている。初戦がイギリスで、その後ドイツ、オランダ、ベルギー、イタリアを回って、最後にもう一度ドイツに戻ってきて最終戦が開催される」

 ビショップによれば、マシンはFIAがF3仕様としてホモロゲートしたタトゥースT-381で、参戦するにあたってのスポンサーマネーを用意する必要はないが、Wシリーズ側が行うテストプログラムでしっかりと能力を証明して合格しなければ、参戦は認められない。

「世界30カ国から100名以上のエントリーがあり、その中には日本人もいる」と語ったビショップ。11月28日に発表された1次選考合格者リスト55名の中には、日本のFIA-F4選手権に参戦していた小山美姫選手の名前があった。

「これから最終選考が行われる。市販車によるドライビングテストやフィットネスプログラムと心理プロファイリングなどを3日間にわたって行われ、55人の中から最終的に18名がWシリーズのチケットをつかむことになる」

 小山美姫選手が、Wシリーズ参戦のチケットを獲得することができるのか。ビショップ広報部長が配信する最終選考結果を楽しみに待ちたい。

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