東京裁判70年で講演 「個人責任を認め、実践した先例」

 太平洋戦争後に日本の指導者を裁いた極東国際軍事裁判(東京裁判)終結から70年。政治史の観点からではなく、刑事事件として裁判の歴史的意義を見つめる講演会が1日、横浜市金沢区の関東学院大学で開かれた。ハワイ大学の戸谷由麻教授(歴史学)が登壇し、「個人責任の原則を認め、実践した国際裁判の先例」と強調した。

 東条英機元首相らA級戦犯が問われた「平和に対する罪」などは、従来の国際法になく、連合国が事後につくった罪状だった。原爆投下のような連合国の行為は罪に問われず、戦勝国による「勝者の裁き」との批判が国内に根強い。

 一方で国際的には、ドイツの戦争指導者を裁いたニュルンベルク裁判とともに、国際人道法や国際刑法の発展に寄与したと評価されている。戸谷教授は「国内では戦後長らく、主に政治史や外交史から研究されてきたが、国際刑事裁判史上の画期的な司法事件だった」と指摘した。

 東京裁判で提起された訴因55件のうち、46件が刑法上の個人責任に言及していることを戸谷教授は重視。禁錮7年の判決を受けた元外相の重光葵の事例から、一般的に論点として定着している「共同謀議」の責任論を考察するだけでは「裁判の全貌を的確に把握できない」と解説した。

 東京裁判は1946年に開廷し、戦争を指導した28人がA級戦犯とされ、48年11月の判決で25人に絞首刑や終身刑などの有罪が宣告された。

東京裁判で裁かれた戦犯の責任論について語る戸谷由麻教授=横浜市金沢区の関東学院大学

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