【高校野球】智弁和歌山・高嶋前監督が「もっとも手を焼いた子」 WBC侍戦士に成長した左腕

勇退記念パーティーに出席した智弁和歌山前監督・高嶋仁氏【写真:沢井史】

勇退記念パーティには日ハム西川、中日岡田ら200人もの教え子が集結

 200人もの教え子たちが集まった高嶋仁前監督勇退記念パーティには西川遥輝(日本ハム)や岡田俊哉(中日)、今季引退を表明した武内晋一(ヤクルト)やこの秋のドラフト会議でロッテから2位指名されたばかりの東妻勇輔(日体大)らも顔を揃えた。

 特に岡田は高嶋前監督が以前、「もっとも手を焼いた子」と振り返ったことがあるほど、高校時代は“やんちゃ”さが目についていた。1年生からマウンドに立ち、経験は豊富。だが、打たれるとマウンドでふてくされたり態度に出てしまうことが多かった。さすがの高嶋監督も手を焼いてきたが、今では中日ブルペンには欠かせない投手になった。17年にはWBCの日本代表選手に選ばれるまでになったが、昨年6月には血行障害の手術を受け、今季27試合に登板し復活を果たした。

「高校3年間は本当に濃い3年間でした。高嶋先生には迷惑を掛けたことも多かったですが、今こうしてプロでやっていけているのも高校時代の経験があったからです。自分も来年は10年目。来年は高嶋先生に試合を見に来てもらえたらと思います」

 そして、高嶋前監督が指導した選手で唯一、5季連続甲子園出場を果たした選手がいる。11年夏まで、5度あるすべての甲子園出場機会をものにし、早大を経て現在は明治安田生命でプレーしている道端俊輔だ。1年生から捕手としてレギュラーをつかみ、高校3年時は捕手としてアジアAAA野球選手権大会(当時。現在のU18)の日本代表にも選ばれた。だが、実は本格的に捕手を始めたのは高校に入ってからだったという。

高嶋前監督について語った明治安田生命・道端俊輔【写真:沢井史】

唯一、5季連続甲子園出場を果たした道端俊輔

「中学まではピッチャーをすることが多かったのですが、高校から捕手1本でした。リードに関してはよく怒られましたよ。高嶋先生は勝負に関してはすごく厳しい方。何でも完璧でないとダメでしたから。当時は結果がすべてという指導で、抑えればOKですが、打たれれば『何であのリードが』ってずっと言われました。キャッチングも含めて、数えきれないほど厳しく指導されましたね」

 早大では3年まで自身の不調もあり、なかなか試合の出場機会に恵まれなかったが、4年になってようやくマスクを被る機会が増え、社会人野球というワンランク上のステージにも進んだ。現在は3年目を過ごしている。

「ここまで野球をさせてもらっているのはありがたいこと。でも、ずっと野球を続けられる訳ではないので、この先の人生のことも考えてはいます。ただ、高嶋先生の指導があったから今の野球に生きている部分もあるし、今後の人生に生きていくこともあると思います」

 恩師の勇退に関しては「寂しさを感じる」と話したが、5度も名将と戦った甲子園は、一生の財産になるだろう。(沢井史 / Fumi Sawai)

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