慶大野球部が難病中学生を支援 絆学び“卒業” 

 伝統の「KEIO」のユニホームをまとった難病で長期療養中の中学生プレーヤーが1日、東京六大学リーグの慶大野球部を“卒業”した。今夏から5カ月にわたって大学生チームに混じって野球に取り組んだ中学1年の岩田遼さん(12)=横浜市青葉区。修了式では、野球に加えて多様な経験や交流を経て「チームの絆の深さと団結力を学んだ」という大きく成長した姿を披露した。

 成長軟骨に異常がある病気を持つ岩田さんは、身体的理由から一般の野球チームに入部しづらいという。そこで、難病や慢性疾患などで長期療養中の子どもたちに、スポーツを通じて自立を支援するNPO法人「Being ALIVE Japan」(東京都世田谷区)と慶大野球部が企画し、岩田さんは8月に同部に入団した。これまでに計5回練習に参加し、10月27日の早慶戦では神宮球場で始球式も務めたという。

 現在、長期療養を必要とする児童らは全国に約25万人いるというが、退院して復学後も通院しながら日常・学校生活になじむのは容易ではない。学童期に自身も長期療養を経験した同NPOの北野華子理事長(31)は「学校に行けないことで、友達との関係づくりもどうしようとなってしまう。自信を得る機会が必要」と意義を説明する。

 入団当初、言葉少なだった岩田さんは徐々に大学生たちとも打ち解け、練習で率先して選手に給水コップを手渡しするなど、自発的な行動が目立つようになったという。

 1日に同市港北区の慶大下田グラウンドで行われた修了式に先立ち、紅白戦に出場し躍動した岩田さん。この間は、練習から帰宅後も欠かさず素振りを続けたといい、「成果が出た。ここまで成長できたのも、選手と監督のおかげ。本当に楽しかった」と感謝を込めて振り返った。

 慶大野球部にとっても、こうした選手を受け入れたのは初めて。3年の細川航選手は「遼君のおかげでチームの雰囲気も良かったし、野球は楽しいという初心に戻れた。こうした活動も『エンジョイ・ベースボール』につながる」と、慶応伝統の代名詞を社会貢献の場でも実践した。

 これからも大好きな野球を続けるという岩田さんは「将来は野球に関わることがしたい」と無限の夢を思い描いている。

練習を積み、紅白戦で成長した姿を見せた岩田さん

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