金属行人(12月3日付)

 「今はいいよな。加工設備さえ入れればもうかる。でももう少し長い目で見たら、どういうことになるのかな」との声が市場から漏れてきた。いったいどういう話だろうか▼1970年8月。中山律子さんが「レディズ・チャレンジボウル」で女子プロ初のパーフェクトゲームを達成した。これで一気にボウリングブームが到来する。若い世代を中心に、誰もが10ポンド近いボールを下手投げで這わせた。当時、雨後のたけのこのようにできたのがボウリング場▼子供ながらに「こんなにたくさんボウリング場ができていいのか」と父に聞いてみた。すると「いいんだよ。ボウリング場は今なら1年で元が取れる。後はどうでも構わないらしいよ」との答え。流行とはそんなものなのかと思い「学校の勉強も同様なのかな」と懸念したことを今でも思い出す▼よもやボウリング場のように加工設備を取りそろえている扱い筋ばかりでもあるまい。多くは流行に左右されず中長期的に考えているに違いない。しかし、現在をそのように捉えている人たちもいる。「これはブームだ」と▼そんな中、日本のものづくりを支えてきた中小零細の「店じまい」が相次ぐ。不易流行で来たはずのそうした店の退場。どう捉えればいいか。

© 株式会社鉄鋼新聞社