利便性、ユーザーニーズ追求
電動工具メーカー大手の工機ホールディングス(工機HD、本社・東京都港区、社長・前原修身氏)は、10月から新ブランド「HiKOKI(ハイコーキ)」製品の本格販売を開始した。世界で展開する電動・エア工具の中核を担うブランドと位置付けており、今後市場ニーズを反映した新製品を随時投入。ブランドの浸透と国内外でのシェア拡大を目指していく。(後藤 隆博)
工機HDの誕生
工機HDは旧日立工機で、昨年親会社の日立製作所が米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)に全株式を売却。KKR傘下のHKホールディングスの完全子会社となり、今年6月に現行社名に変更した。
プロ用、DIY、園芸用、アクセサリなど約1300機種の電動工具を市場投入している。年間売上規模は1912億円(18年3月実績)。製造拠点はマザー工場となる佐和工場(茨城県ひたちなか市)のほか、中国に3カ所、台湾とマレーシアに各1カ所ずつある。
今回本格販売を開始する「ハイコーキ」のほか、一昨年子会社化したドイツ・メタボ社の製品など複数のブランドを展開している。売上げの約8割は海外向けで、うち欧州と北米向けが65%を占める。日本をはじめ世界95カ国で販売実績があり、電動工具事業において日本市場では2位、世界市場では4位グループの位置にある。
1954(昭和29)年からは理化学機器の製造を開始。現在は各種遠心分離機を製造する「ライフサイエンス事業」として、同社のもう一つの基幹事業となっている。
新ブランド名への思い
「ハイコーキ」は日立工機時代から70年におよぶ歴史の中で中核をなす強みを「ハイ=高い」と表現。社名の「KOKI」と掛け合わせている。同社の考える自社の強みとは(1)技術力(Highly innovative technology)(2)信頼性(High reliability)(3)成長性(High potential for business growth)の三つ。
ブランドのロゴマーク=写真=では「ハイコーキ」と読みやすくするために「i」を小文字にし、マークの「i」と「K」の間に隠し文字として「1」を表現している。「1」には、顧客にとってのナンバーワン、オンリーワンを目指すという思いが込められている。
ブランド製品の共通コンセプトは、コードレスによる利便性とパワー、耐久性、精度、携帯性を兼ね備えた製品。これを実現するアイテムの一つが、新世代のリチウムイオン蓄電池「マルチボルト」だ。
マルチボルト(BSL36A18形)は、同社18Vリチウムイオン蓄電池(BSL1860形)とほぼ同等のコンパクトサイズ・質量で、高出力セルの採用により36V、1kWクラスのパワフルな出力を実現した。同社18Vコードレス工具との互換性も備えている(一部製品除く)。残量表示機能付で、18~36Vスライド電池対応の同社充電器で充電可能。業界で唯一となる購入から2年間、充電回数1500回までの電池保証も行っている。
ハイコーキブランドのマルチボルトシリーズ製品には、すべて同バッテリーが採用されている。また、電源のある場所ではAC/DCアダプタを装着することで、AC工具として長時間の連続作業が可能だ。
新製品も続々登場
ハイコーキブランドの新製品も続々と発売が開始されている。
コードレスセーバーソー「CR36DA形」は、振動低減を図る「ツイン回転式カウンタウエイト」と楕円形ストロークで勢いよくブレードが食い込む「オービタル機構」を搭載。コードレスナンバーワンの切断スピード(同社調べ)と約50%の振動低減を実現した。
10月末には、新コードレス仕上釘打機「NT3640DA形」の発売を開始。進化したカウンタウエイト構造による同社独自の反動低減機構と強力スプリングによって、35ミリ釘がしっかり打ち込め、40ミリ釘への対応も可能となっている。
10月1日に454機種でスタートしたハイコーキブランドは、同月末時点で527機種と73機種を追加ランアップ。同社では今後も、ハイコーキブランド・マルチボルトシリーズのラインアップ拡充を図っていく。
拡販キャンペーン実施
ハイコーキブランドの本格販売に合わせて、工機HDは積極的に拡販キャンペーンを実施している。
ブランドの本格展開を始めた10月1日から「できるだけ多くの顧客にマルチボルトシリーズを体験してもらう機会を」とのコンセプトで、全国で展示即売会を実施中。来年3月末までの6カ月間で計約3600回開催する予定。先月までの展示会では、マルチボルトシリーズ製品購入者にクオカードも贈呈した。
さらに、同じく先月からLINEを活用した情報提供サービスを開始。電動工具取扱販売店やホームセンターにQRコードなどを案内しLINEの友達登録してもらうことでマルチボルトシリーズの新製品情報や展示即売会情報などをタイムリーに配信する。その他、タグラインを広くプロモーションするためのウェブ動画なども制作している。
「第二の創業」として、70年の歴史に裏打ちされ新たなスタートを切った工機ホールディングスと新ブランド「ハイコーキ」。世界水準の技術力をもとに成長を加速し、グローバル市場におけるリーディングカンパニーを目指していく。
10月1日「電動工具の日」に認定
一般社団法人日本記念日協会は、今年から10月1日を「電動工具の日」と認定した。
漢字で「十月一日」はプラスとマイナスドライバー、「10」と「1」はイチとゼロでスイッチを表現しており、電動+工具の記念日に相応しいと判断。奇しくも、工機ホールディングス新ブランド「ハイコーキ」の本格販売開始日が電動工具の日に認定された形となった。
新ブランド方針発表会開催
工機ホールディングス(HD)は10月1日、新ブランド「ハイコーキ(HiKOKI)」本格販売開始に合わせて、東京・港区のホテルオークラ東京のアスコットホールで方針発表会を開催した。
第一部のプレスカンファレンスでは、前原修身社長をはじめ経営首脳陣が工機HDの組織体制や今後のブランド展開方針、新製品キャンペーンについて説明。前原社長は「ユーザーである職人のニーズに常に耳を傾け、新ブランドのもとグローバル市場への展開を加速させていきたい」と今後の抱負を語った。
その後、会場の外に設置された製品の展示コーナーで「タッチ&トライセッション」と題した実機のデモンストレーションや加工体験なども行われた。