桂文福 - 東西の色物芸人が大阪ロフトプラスワンに集結!

文福さんの行きつけの喫茶店”ケルン”でインタビュー

——こちらの喫茶店にはよくいらっしゃるんですか?

文福:そうそう、ここは繁昌亭の前やしね。この辺りがまだ更地やった時に、協会の理事で担当をやってて、この喫茶店はその頃からずっとやってたから、マスターと知り合うて仲良くさせてもらってるんです。場所的にもね、若い落語の子とかも、みんなお世話になってますね。

——看板は文福さんが描かれたイラストですよね?

文福:そう、ここのメニューで”繁昌亭カレー”というカレーがあるんやけど、ちょうどこの場所に繁昌亭ができる時に名前を”繁昌亭カレー”にしたいとマスターが言うててね。ほんで、それなら更に一工夫欲しいということになって、僕が絵を描いて、「繁昌亭で笑ってカレーなる人生を!!」という一言も添えてね、看板とかスプーンの袋とかをデザインさせてもうたんです。ほんまにマスターも良い人で、いつもお世話になってるんです。

快楽亭ブラックとの出会い

——快楽亭ブラックさんとはいつ頃からのお知り合いですか?

文福:もうね、長いですよ。同級生でね、歳が一緒なんですわ。正式に言うと、彼は僕より3年くらい先輩になるんですよ。というのはね、東京で早くから立川談志師匠のところに居てたんですよ。で、東京で前座修行をしてる時にいろいろしくじったみたいで、それが原因で大阪に流れてきたんですわ。その時に、今の文枝さん…その時で言うと桂三枝さんね。三枝さんがまだ弟子の居ない時に、談志師匠からこいつを頼むよー言われたみたいで。ほんで、その時に預かった三枝さんの兄弟弟子から、「東京からなんや変わったやつが来たで」と言われて知り合ったんですわ。ほんで彼は一から修行になるから、そこで同期になって気が合うてっていう感じですね。当時の名前は立川ワシントンやったかな?

——それは何歳くらいの時のお話ですか?

文福:そうやね、僕が19歳くらいの時かな? でもね、彼は16歳くらいからもうやってはるわけですな。で、19歳くらいの時に出会って、同じ一門やしね、正式に言うたら兄貴の子やから俺が叔父で向こうが甥っちゅう感じやけど。もう気が合ってね、しょっちゅう一緒に居ましたね。

——仲が良かったんですね。

文福:そうそう、当時、松山の方で毎週ラジオの収録があって、彼が空港の近くに住んでたんですよ。ほんで、飛行機に乗る前の日に彼の家に行ってよう泊めてもうててね。で、朝起きたらちゃんとみそ汁とか作ってくれたりしてましたね(笑)。よう一緒に酒も飲んだしね。

——すごく良いエピソードです。

文福:そうやね。ほんでね、彼がちょうど”桂サンQ”になった頃に、談志師匠から許しを得て、東京に帰って行ったんですわ。それからね、名前を変えて、”立川レーガン”とか、”立川カメレオン”とか、”立川小錦”とかね、ほんで一番笑ったんが、”英国屋志笑”いう名前ね。英国屋は有名なソープランドですわ(笑)。

——(笑)。

文福:それで、彼はその後、快楽亭を継ぐとなって。で、”快楽亭セックス”になったというのを、たまたまうちの嫁から聞かされてね、えー! 言うて笑いましたわ(笑)。

——そんなお名前の時があったんですね(笑)。

文福:彼はお父さんの血が濃かったけど、英語が全くダメで、しかも落語が大好きでね。江戸っ子の粋なところもあるしね。でも見た目がアメリカ人が強いもんやから、苦労したと思うんですよ。でも、彼は苦労したとか一切言わんかったね。

——あんまりそういうお話はしないんですか?

文福:しないね。しないし彼もまあ、せえへんね。

——そしたらお酒を飲む時は楽しいお話が多いですか?

文福:そうそう、もうね楽しい変態話ばっかり(笑)。あとは芸の話もするけどね。やっぱり彼の凄いところはね、小学生の頃いうたら昭和30年代の話で、おそらく学校に行っても、髪の毛は茶色やし、顔は外国人の顔やしね、苦労したと思うけど、そういうの一個も言わんかったね。

——2人で舞台に立ったことはことはあるんですか?

文福:何度もありますよ。東京池袋の文芸座の地下とかね、関西では小さな寄席とかやけど、しょっちゅう一緒にやってましたよ。

——実際に会うのはどのくらいぶりですか?

文福:いやいや、結構会ってますよ。去年…ぶりかな? 東京でたまに会うんですよ。僕がね、年に三回は相撲で東京に行くんで、結構会う機会はありますね。

上方落語協会が年に一度開催する彦八まつり

——文福さんといえば河内音頭取りで、来年は彦八まつりの実行委員長をされるんですよね?

文福:そうそう、来年はね、境内に矢倉を組んで、河内音頭は仲間の音頭取りにも頼んで、踊り子さんも呼んで、生の太鼓やギターも入れて盛大にやろうとかなと考えてるんです。

——もうある程度決められてるんですね。

文福:あと、相撲関係での知り合いのちゃんこ屋の大将とか呼んで、ちょっと暑い時期やけどちゃんこもやろうかな思ってます。弟子も孫弟子もたくさん居るからね、みんなサポートしてくれるんですわ。

——文福さんが編集されている、『いちもん新聞』でも文福一座の活躍を読ませていただきました。

文福:いちもんの情報誌ね。今は年に3、4回発行してて、僕が編集発行から全部自分でやってます。もう25年くらい続いててね、何もスポンサーもつけんと自費でやってて、今は100号を超えて、第109号まで発行してます。ほんで、繁昌亭とかで、寄席の時に配ったりしてますね。

——その中で、演歌歌手の市川由紀乃さんとも対談されてましたよね?

文福:そうそう、彼女はね、デビューしてからもう24年紅白に出てるんです。なのに、天狗にもなってない心優しい良い人で、背も高いし顔も可愛らしい、歌もうまい! ハートが最高の女性なんです。今年の七月に大阪会場でサプライズゲストで出演させてもらって、なんと対談させていただいてね!

——すごいです! けど…これは…自慢話ですね!?(笑)

文福:そうそう、自慢話(笑)。何が凄いかってね、よく一緒になるファンのおっちゃんが居て、その方は二年前に奥さんを亡くして、もう泣いて落ち込んで、後を追おうかなとかも考えて塞ぎ込んでる時に、たまたま見たテレビで市川由紀乃さんを知ってね。可愛らしいし、歌もうまいということで励まされたみたいでね、それでコンサートも見に来るようになって、毎回会うようになったんですわ。そういう交流もあるしね、由紀乃さんは勿論やけど、ファンの方も、事務所自体もあったかいんですわ。

——由紀乃さんへの愛がよく伝わってきました(笑)。では、今回ロフトプラスワンウエストに出演されるのは初めてだと思いますが、どういったイベントになりそうですか?

文福:そうやね、やる内容としたら、先に私が出て落語をやって、そして次に快楽亭に落語をやってもうて、で、ちょっと2人でトークいう感じかな。軽く酒でも飲みながら楽しくやれたら最高やね。

——それでは、今回のイベントに興味のある方へ向けて何かメッセージをお願いします。

文福:まあね、普通に落語を聞けるというのも勿論やけど、今回はちょっと特殊やから、僕も落語のエキスは入れるけどね、河内音頭とか相撲の話も出来たら良いなと思ってますし、快楽亭は独特のお色気なネタがあると思うのでね、面白いイベントになると思いますよ。

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