住民投票条例案を否決 MICE整備で長崎市議会委

 定例長崎市議会の環境経済委員会は7日、市民グループが請求していたMICE(コンベンション)施設整備の是非を問う住民投票条例案について審査し、賛成4、反対5の反対多数で否決した。14日の最終本会議でも否決される見通し。
 同市での住民投票条例案提出は2016年以降、市公会堂存廃などを含め5回目で、全て否決となった。田上富久市長は5回とも条例案に反対する意見書を付けた。今回の市民グループ代表、吉富博久・元同市議(73)は報道陣に「市民置き去り。これが今の長崎市政。許せない」と憤った。
 MICE施設は市が総事業費216億円をかけJR長崎駅西側に整備し公設民営とする。隣接地で民間が開発するホテルなどと合わせて交流人口拡大を図る。
 審査には、市民グループ側から吉富氏や塩川寛・元同市議(67)ら3人が出席し「ほとんどの市民はMICEが何かを知らず、市の財政も厳しい。立ち止まるべき」と指摘。近くで計画されている民間のサッカースタジアム整備などへの支援を優先すべきと訴えた。
 条例案に賛成した4委員のうち、池田章子委員(市民ク)は「住民投票は国民の権利だ」と強調。市側がMICE事業を「時間をかけて議会と議論し、官民も一体となっている。自信がある」と説明すると、平野剛委員(明政ク)は「そこに疑義があるからこその住民投票だ」と述べた。
 田上市長が意見書で、仮に事業が頓挫すれば事業者から多額の損害賠償を求められる可能性があるとしたことに対しても「脅しだ」との批判が相次いだ。
 一方、条例案に反対した5委員のうち、井上重久委員(市民ク)は「何もしなければ長崎の経済は衰退する」とし、毎熊政直委員(明政ク)は来春の市長選で争点になるとみて「民意はそこで問える」と語った。

長崎市議会環境経済委員会の委員ら(手前)に住民投票の必要性を訴える吉富氏(中央)=同市議会

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