在宅医療需要2035年に2倍超 横浜市ビッグデータ分析

 横浜市医療局が今年3月から稼働した独自の医療ビッグデータに基づき実施した分析で、在宅医療需要(訪問診療・往診)が今後20年で2倍以上に急増することが分かった。これに伴い在宅医療を担う医師の負担も大幅に増える見通し。市は分析結果を踏まえ、在宅医療支援体制の強化や在宅医の養成といった政策の立案を進める考えだ。

 分析結果は学術論文としてまとめられた。それによると、同市内では2015年度に3万9174人が在宅医療を受診。この実数と人口動態を基に予測した在宅医療需要増は、20年には15年比128%、25年は同158%と右肩上がりで増加。35年には212%と2倍を超える見通しだ。

 この増加分を15年度時点の市内在宅診療施設数で負担すると想定した場合、医師の負担増は、25年に78%、35年に148%になると見込まれる。医師が請求するレセプト(診療報酬請求明細書)数の推計に基づき算出した。

 超高齢社会の進行を背景とした在宅医療需要の大幅な増加を踏まえ、市医療局は、対策の柱として▽在宅医療の体制整備▽市内で在宅医療を担う医師養成研修▽在宅医療を支える訪問看護ステーションの看護師の質向上▽在宅医療の普及・啓発-の4点を提示した。

 具体的には、24時間体制となる医師の負担を軽減するためのバックアップシステムモデルの構築や在宅医療を担う有床診療所支援、横浜市大と連携した訪問看護師人材育成プログラムの作成などに取り組む。

 論文は老年医学領域の著名な国際誌「Geriatrics & Gerontology International」に掲載された。医療技術の進歩や社会情勢の変化は加味されていないが、市医療局は「(同誌掲載によって)専門家から客観性の高さを認定されたことで、科学的根拠に基づく政策立案の重要な一歩となる」としている。

 市は、保有する国民健康保険、後期高齢者医療制度、医療扶助の患者の医療レセプトデータ(データ件数年間3千万件以上)を、個人識別性を低減した上で集約しデータベース化。本年度は介護レセプトデータベースとの一体的な分析を可能とし、市民の約35%、とりわけ75歳以上はほぼ100%をカバーしている。

横浜市役所

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