終わってみれば、ポジティブな1年だった。
昨季の14位から10位とランクアップを遂げた水戸ホーリーホック。序盤戦には首位に立つなど、わずか時間ではあったが夢を見させてもくれた。
しかし思い返せば、開幕前は不安が尽きなかった。
笠原昂史(大宮アルディージャ)、内田航平(徳島ヴォルティス)、佐藤和弘(ヴァンフォーレ甲府)、湯澤洋介(京都サンガ)、前田大然(松本山雅)、林陵平(東京ヴェルディ)ら主力が退団。更に、新監督に迎えた長谷部茂利氏は、シーズンの最初から指揮を執るのがキャリア初であり、手腕はほぼ未知数だった。これらの逆境を跳ね除けての10位なのだ。この結果は称賛されて然るべきだろう。
今回の当コラムでは、そんな水戸の今季をプレイバック。
ポジションごと(公式サイトに登録されたポジションではなく、実際に起用されたポジションでカウント)に活躍度合いやトピックを振り返っていきたい。なお、基本フォーメーションと主なメンバーは下記の図の通りだ。
■GK/熾烈な争いを制したのは…
昨季までの正守護神・笠原が大宮へ移籍し、守護神争いが注目の的となったゴールキーパー。
開幕前は大ベテランの本間幸司と笠原と入れ替わる形で加入した松井謙弥の熾烈な争いが予想されたが、最終的に松井が定位置を掴んだ。
また、市立船橋高から加入したルーキーの長谷川凌も抜擢を受けリーグ戦2試合に出場。そのままポジションを奪うには至らなかったが、今後の水戸を背負う逸材であるのは間違いない。本間と松井から技術を盗み、来季以降の飛躍に期待したい。
■DF/序列の覆りがトピックに
最終ラインは今季も4バックがメインとなった。右サイドバックは田向泰輝と浜崎拓磨によるハイレベルな争いが繰り広げられたが、田向がレギュラーに君臨。先輩の意地を見せた。
一方の左サイドは、新加入のジエゴが主戦の佐藤祥からポジションを奪う結果となった。果敢な攻撃参加とロングスローは大きな武器となり、サイドアタックに一役買った。
そしてセンターバックは、キャプテンの細川淳矢が魂のこもったプレーで最終ラインを統率。その相棒にはJ3の藤枝MYFCで研鑽を積んだ伊藤槙人が定着した。
こちらも福井諒司の牙城を崩し、本人が目標に掲げた「スタメン奪取」を見事に達成している。力強さを増した背番号5には来季の更なる活躍を求めたい。
■MF/頼もしく成長したボランチコンビ
右サイドハーフの主軸となったのは、大宮からレンタルで加入した黒川淳史だ。シーズン途中には怪我に苦しむ時期もあったが、キレのあるドリブルと積極的な仕掛けで、特に序盤戦の快進撃で存在感を発揮した。
また、6月にベガルタ仙台から獲得した茂木駿佑は、リーグ戦24試合出場で4得点と結果を残した。両名とも来季も水戸でプレーするとなれば、非常に心強い。
対する左サイドは、徳島から加入した木村祐志が年間を通して活躍を見せた。巧みな技術とベテランらしい戦術眼、正確なプレースキックで攻撃を牽引。“背番号10”に相応しい出来だったと言えるだろう。
そしてボランチは、大宮からの期限付き移籍期間を延長した小島幹敏が中盤の柱へと成長。定評のあるパスセンスに加え、ゴール前への攻撃参加にも磨きがかかり、チーム4位タイとなる4得点を記録した。
小島のパートナーを担った前寛之は、13節の徳島戦から最終節まで連続して先発出場。こちらもパスセンスを武器に、ゲームをコントロールする役目を演じた。このダブルボランチは、試合を重ねるごとに頼もしさを増した印象だ。
■FW/“特大の才能”に開花の気配
昨季の主力だった林と前田を失った最前線は、新加入のジェフェルソン・バイアーノがリーグ戦11得点を挙げ、チーム内得点王に輝いた。恵まれた体躯を活かしたポストプレーと馬力のある突破は相手に脅威を与えていた。
2年目を迎えた伊藤涼太郎は、特大の才能を水戸の地で開花させつつある。パス、シュート、ドリブルと攻撃全般の能力に秀でた背番号46がひと際輝いたのは、14節のファジアーノ岡山戦。
2ゴール・1アシストの大活躍で快勝劇の主役となった。来季も水戸でプレーするのであれば、今季未達に終わったリーグ戦ふた桁ゴール(今季は9ゴール)の達成に期待したい。
なお、J・バイアーノは期限付き移籍期間の満了がアナウンスされており、この穴を埋める補強は必須。どのような選手を陣容に加えるか、今後の動きを楽しみにしたい。加えて、思うような結果を残せなかった宮本拓弥、齋藤恵太には奮起を求めたいところだ。
2018/12/09 written by ロッシ