「47県・地域のデザイン」を見つける展示会  差別化の武器のヒント?

 デザイン活動家のナガオカケンメイ氏が代表を務めるディアンドデパートメント(東京都世田谷区)は12月7日、日本の「ロングライフデザイン」を2年に1度の定点観測で紹介する展示会「LONG LIFE DESIGN-1 47都道府県の健やかなデザイン展」を、東京・渋谷の「d47MUSEUM」でスタートした。

 初開催となる今回は、ジャンルを問わず47都道府県で生まれている多様なデザインを紹介。その生まれ方や土地との関連性を紐解きながら、未来を見据え、改めてそれらのデザインの可能性に迫るものとなっている。地域を担う工務店にとっても、これからの経営で差別化の武器となるヒントが見つかりそうだ。同展示会のキュレーションを手がけるナガオカ氏は、12月19日に開催される「住宅産業大予測フォーラム2019」でも講師として登壇する。

「d47MUSEUM」の展示風景

 会期初日のプレスツアーで挨拶したナガオカ氏は、新たにスタートを切った展示会の意図として「日本が日本らしく成長するためには、47の日本が個性的であることが大事。デザインは、エッジの効いた、やや使いづらい、目立ったデザイナーの名前がついたものではなくなった。地方に根付いた、息の長いものがデザインと言われるような時代になってきた。“健やかなデザイン”という言葉にそういう思いを込めた」と語った。

ナガオカケンメイ氏

 その言葉どおり、47点の展示はそれぞれに異なる出発点と今の表情を持った個性派が揃った。家具では、秋田木工(秋田県湯沢市)の「#202 スタッキングスツール」、天童木工(山形県天童市)の「低座イス」、カリモク家具(愛知県刈谷市)の「カリモク60 Kチェア」、マルニ木工(広島市佐伯区)の「マルニ60 オークフレームチェア」などが、長く人々に親しまれる、各県を代表するデザインとして紹介された。

天童木工の「低座イス」(右)。左は、福島県二本松市で50年以上前から作られる「テーパーバケット」(ぶんぶく=東京都墨田区)
マルニ木工の「マルニ60 オークフレームチェア」。厳島神社の鳥居がフレームのモチーフとなっている

 伝統工芸に根ざしたものでは、岩手県二戸市浄法寺の漆を使った「浄漆椀」(滴生舎)や、三重県の萬古焼を背景に生まれた「鉄錆膳」(内田鋼一)、鳥取県の因州和紙の伝統を汲んだ「Mokumoku Tablestand」(谷口・菅谷和紙)、熊本県の「天草更紗」の技術を復興させた「天草更紗 いろいろポーチ」(野のや)などが展示された。

 また、静岡県からは人間国宝の故・芹沢銈介に師事した染色家・山内武志氏の「椅子敷き」が選ばれた。当日来場した山内氏は「私のように、生きていれば続いていくような個人経営者だから続いてきた。染物はなんでもする。注文に応じれば、ベストを尽くしてやる。こういうところに並べてもらっていいのかな」と自身の仕事への姿勢を語りつつ、今回選ばれたことへの喜びを示した。

滴生舎の「浄漆椀」
山内武志氏の「椅子敷き」

 そのほか、デザイン関連の展示会として珍しいものでは、山口県仙崎の詩人「金子みすゞ」、佐賀県の「唐津くんち」、宮崎県の日本初の乳性炭酸飲料「スコール」なども、「ロングライフデザイン」として紹介された。

 同展示会の会期は12月7日〜来年3月4日(1月1日のみ休館)。会場は、東京都渋谷区の「渋谷ヒカリエ」8F「d47MUSEUM」。入場料は無料。

金子みすゞの残した言葉も「健やかなデザイン」の一つ
日本初の乳性炭酸飲料「スコール」

この展示会をプロデュースしているナガオカケンメイさんの講演が聴ける!住宅産業大予測フォーラム2019のお申し込みは「こちら」。

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