被爆体験者 第2陣訴訟 原告側 全面敗訴 一審勝訴の10人逆転判決 福岡高裁

 爆心地から12キロ以内の被爆未指定地域で長崎原爆に遭った「被爆体験者」161人が県と長崎市に被爆者健康手帳の交付を求めた第2陣控訴審の判決が10日、福岡高裁であった。矢尾渉裁判長は、原告のうち10人を被爆者と認めた一審判決を取り消し、全員の訴えを退けた。被爆体験者にとって初めて被爆者と認められた一審判決とは一転、厳しい判決となった。原告側は上告する方針。
 主な争点は、被爆者援護法で「身体に原爆放射能の影響を受けるような事情の下にあった」と規定する「3号被爆者」の要件に該当するか否か。一審判決は、原爆投下による年間積算被ばく線量25ミリシーベルト以上と推定される10人を3号被爆者と認定し、県と市に手帳交付を命じた。これに対し、原告側と被告側双方が控訴していた。
 だが二審判決は、10人を含めた原告全員について「年間100ミリシーベルト以下の低線量被ばくによって健康被害が生ずる可能性があるとする科学的知見は確立していない」として「被爆者」に該当しないと判断した。
 また、10人を被爆者と認めた一審判決で採用された長崎市の医師の意見書について、二審判決は「被ばく線量の推計が過大となっている可能性がある」と指摘。被爆未指定地域の住民は内部被ばくを受ける状況にあったと認めたものの、10人の外部被ばくによる年間積算線量は、福岡高裁が独自に計算した「18・7ミリシーベルト」を上回ることはないとした。
 原告が訴えていた内部被ばくの健康影響についても二審判決は「長期的にみてもかなり微量にとどまる可能性が高い」と指摘。被爆未指定地域で原爆放射線による急性症状などを発症した人がいたという「高度の蓋然(がいぜん)性は認められない」とし、原告全員が3号被爆者の要件に該当しないと結論付けた。
 第2陣は第1陣に続いて2011年6月に提訴。昨年12月の第1陣最高裁判決では、入市被爆の可能性があるとして長崎地裁に審理が差し戻された原告1人を除き全員敗訴していた。敗訴した第1陣のうち28人は長崎地裁に再提訴した。

◎被爆体験者
 国が定める被爆地域(南北12キロ、東西7キロ)外で長崎原爆に遭い、被爆者と認められていない人たち。国は被爆当時の行政区域を基に被爆地域を設定したため、爆心地から同じ半径12キロ内で原爆に遭っても、場所によって援護に差が生じている。被爆体験者は被爆者援護法に基づく援護が受けられず、医療給付は精神疾患と合併症に限られる。国の支援事業で健康診断を年1回無料で受けられるが、がん検診は含まれない。県内の被爆体験者は11月末現在、7026人。

第2陣訴訟の控訴審判決を受け「不当判決」の垂れ幕を掲げる弁護士ら=10日午後2時13分、福岡高裁前

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