貧困世代間連鎖に歯止めを ひとり親家庭の通勤費など実費補助へ 川崎市

 ひとり親家庭の経済的支援策の見直しを進めてきた川崎市は、2019年度から保護者と高校生の通勤、通学費の補助を拡充することを決めた。併せて、生活保護受給世帯の中学生を対象としてきた学習支援を、小学生も対象に加えた上で、ひとり親家庭にも適用範囲を広げる。支援策を充実させることで、貧困の世代間連鎖を断ち切りたい考えだ。

 通勤、通学費の補助は、通勤手当の支給がない職場に勤める保護者と高校生が対象。保護者には月8千円を上限として通勤実費を、高校生には通学定期の相当額をそれぞれ支給する。

 市はこれまで、児童扶養手当を受給する家庭からの申請に基づき、市バスに無料で乗れる特別乗車証を交付してきた。しかし特別乗車証は市バスのみが対象で、鉄道や民営バスの利用者にはメリットが少なく、実際に交付を受けた人は全対象者の約6割にとどまっていた。

 市はこうした現状を踏まえ、鉄道も含めた交通費の実費補助に切り替える方針を固めた。1967年から続けてきた特別乗車証は廃止する。

 一方、生活保護受給世帯の中学生を対象にした学習支援事業は2012年度からスタート。市から委託を受けたNPO法人や社会福祉法人が週2回ほど勉強をサポートし、現在は市内12カ所で約250人の生徒が学んでいる。

 19年度からは小学生も学習支援が受けられるようにするほか、ひとり親家庭にも対象を広げて実施。約350人の児童生徒が対象となる見込みという。

 市のひとり親家庭支援事業費は、一般財源ベースで年間約8億円。このうち約4億円を占めていた特別乗車証の廃止による縮減分で、交通費補助と学習支援などの予算が賄えるという。

 市こども家庭課によると、ひとり親家庭の貧困率は保護者が2人以上いる世帯に比べて5倍に上る。市が5月に行った生活状況のアンケートでは、働くひとり親のうち約58%がパートやアルバイトなどの非正規雇用であることも明らかになった。

 経済的に厳しいひとり親家庭では、子育てに手が回らず、子どもに生活習慣や学習習慣が身に付きづらくなる傾向がある。学習につまずいた結果、将来の夢や目標を実現するための意欲が失われ、貧困の連鎖が生じる恐れもある。

 同課は「親の正規就労や子どもの自立に向け、切れ目のない支援策を続けていく」としている。

市から委託を受けたNPO法人のスタッフととともに午後6時半から2時間ほど勉強する中学生たち=川崎市中原区

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