選手と一緒に悔しさを 14日、「FOR REAL」公開

◆「シリーズ史上最も重苦しい作品」

 ベイスターズの2018年の戦いを振り返る球団公式ドキュメンタリー映像作品「FOR REAL-遠い、クライマックス。」が、14日から神奈川県内6カ所を含む全国13カ所の映画館で公開される。3年ぶりにBクラスへ転落した選手、首脳陣のもがく姿を捉え、6作目にして「シリーズ史上最も重苦しい作品」と球団担当者。シーズン終了後に「変化」をテーマに掲げたラミレス監督の表情の移り変わりにも注目だ。辻本和夫監督(33)に撮影時のエピソードや見どころを聞いた。

 落胆、怒り、涙…。試合後のベンチ裏でありのままの感情をぶつける選手たちにカメラを向けてきた。

 映像制作会社でドキュメンタリー映像の撮影などに関わってきた辻本監督は、昨季オフに横浜スタジアムの増築・改修工事のコンセプトムービーに携わったことで、ベイスターズの撮影を手掛けることになったという。「野球の現場は初めてだったので、まず選手との距離を縮めることに力を入れました」。チームに帯同するようになったのは開幕直前だった。

 試合がナイターの日でも、早ければ午前10時に球場入りした。全体練習前の個人練習に励む選手とコミュニケーションを取ったり、打撃に悩む選手のフォームを連日撮影したりする中で、信頼関係を築いていった。グラウンドを後にするのはいつも深夜。シーズン全143試合。休むことなく続いた撮影時間は、計400時間に及んだ。

 何よりこだわったのは臨場感だ。「僕が見た現場にお客さんがいるように描こうと思った。特に負けた直後のシーンは、選手がカメラの存在を気にして気まずい空気になる。その感覚をあえて残したかった」

 それが象徴的だったのは夏場に山崎が打ち込まれた試合後のこと。守護神をカメラで追い掛ける姿勢に、仲間思いのロペスが怒りをあらわにした。

 ただ、翌日にロペスから「厳しい言い方をして悪かった。撮影することはあなたの仕事だと分かっている」と謝罪の言葉があったという。辻本監督は「山崎選手の苦悩を伝えたかったけれど、ロペス選手の人柄にも触れた印象的な出来事でした」と振り返る。

 編集作業には球団の担当者も加わり、4月の8連勝、新人王の東、本塁打王のソト-といった明るい話題は短くまとめた。球団側と辻本監督が「ドキュメンタリーであるならば今季は負けに光を当てることに意味がある」という考えで一致したためだ。

 思うような結果を出せなかった選手たちが試合後に肩を落とし、悔し涙を流すシーンに、何を感じてもらえるか。辻本監督は「社会人になって仕事で涙することなんてめったにない。懸命にプレーする選手たちを撮影しながら背筋が伸びる気分だった。ファンにも作品を通じて選手と一緒に悔しさを思い出すツールにしてもらえたら」と思いを込める。

 横浜ブルク13など県内6カ所を含む全国13カ所の映画館で上映。作品は来年1月にDVDなどでも販売される。

「FOR REAL」ドキュメンタリー映像のイメージ(球団提供)

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