辺野古土砂投入

 背景は、美しい青い海だった。大型トラックが荷台を傾けると、黒々とした土砂の塊が護岸の白いシートの上に落ちた。ブルドーザーがそれをならしていく▲政府が沖縄の米軍普天間飛行場の移設先となる辺野古沿岸部に土砂投入を始めた。きのうテレビに映し出されたこの光景を見て、21年前の本県の光景が脳裏をよぎった。国営諫早湾干拓事業で「ギロチン」と呼ばれた潮受け堤防の閉め切りシーンだ▲どちらも、賛否を巡り激しい応酬があった大型事業が大きな節目を迎えた場面。かけがえのない海がいよいよ姿を変えてしまう-そんなインパクトを見る人に与える▲諫早湾干拓とは違い、辺野古の埋め立て工事では知事が反対の先頭に立っている。急死した翁長雄志氏の遺志を継ぎ10月に就任した玉城デニー沖縄県知事も、政府に工事の中止を求めてきた▲沖縄にばかり基地負担を押し付けるな-というのは、知事選で示された県民の民意。だがその重みを、工事強行に踏み切った政府が受け止めているようにはとても見えない▲諫早湾干拓では広大な農地が生み出された代償として、ムツゴロウなどが生息する干潟の生態系が失われた。辺野古では絶滅危惧種ジュゴンが生息する亜熱帯の海の生態系が失われていく。もう引き返すことはできないのだろうか。(泉)

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