熊本西は野球普及・地域活性化班を新設し工夫と改革…21世紀枠候補校、推薦理由は?

高野連は来春選抜の21世紀枠の候補校9校を発表した【写真:Getty Images】

昭和60年に第67回選手権大会で甲子園に出場

 日本高野連は来春の第91回選抜高等学校野球大会の21世紀枠の候補校9校を発表した。21世紀枠は練習環境、地域貢献などが選考条件となり、各9地区から推薦される。そこで、ここでは推薦された9校の推薦理由などを紹介。今回は九州地区の熊本西高校だ。(主催者発表文より一部抜粋)

 熊本市西部の歴史ある地区に位置し、周囲は自然豊かで田畑が広がる。校訓の「清・明・和」を根幹とし、知・徳・体の調和のとれた教育を通して、世界的視野に立った日本人の育成を目指している。創立44年目を迎え、普通科7クラスと普通科体育コースと理数科が設置されている。部活動は盛んで、ラグビー部、なぎなた部、陸上部、柔道部、水泳部、ウェイトリフティング部などが全国大会に出場を果たしている。ほとんどの生徒が地元中学校の出身。地域に根ざし、昭和54年度から続いている地元神社での清掃ボランティア活動で表彰を受けている。

 野球部創部は昭和51年で、昭和60年に第67回選手権大会で甲子園に出場。2回戦で東農大二(群馬)に敗れた。その後、甲子園出場はない。夏の熊本大会は2年連続初戦敗退で、その悔しさを知る2年生が中心になってチームを立て直し、今秋の快進撃に繋がった。「試合は勝負、練習は教育」の信念のもと、全員で練習に取り組み、全員でグラウンド整備に取り組む。部室管理班、ネット管理班、天気掌握班、野球普及・地域活性化班などユニークな班編成を組み、独自の視点で部活動の工夫に努めている。

人間力の育成を重視「社会人としてのレギュラー」を目指す

 野球のスキル向上とチームの勝利が目標であるが、野球を通した人間力の育成を重視していり、「高校野球のレギュラー」を目指す前に、「社会人としてのレギュラー」を目指すことを指導している。新チームから新設した野球普及・地域活性化班が中心となって企画し、近隣小学校との野球交流や、高校野球200年構想の一環として、こども園を訪問してティーボール体験会を行ったりしている。このオフシーズンは野球に関する課題研究とプレゼンテーションに取り組み、さらに工夫と改革を行っている。

 学校は平成28年熊本地震によって大きな被害を受けた。現役部員は当時中学生だったが、自宅の大規模半壊などで家を失った者もいる。また避難所生活や車中泊を経験した生徒も多い。自らが被災者である中でも支援物資の配布や生活用水の運搬、学校や家屋の清掃など様々なボランティア活動に取り組むことで、助け合いや世代間交流という貴重な経験をしている。

 また、かつて甲子園で対戦した磐城高校とは現在も交流が続いており、東日本大震災の際には元校長が野球のボールを寄付し、その年冬の高校ラグビーでは花園で両校が対戦するという奇跡が起きた。熊本地震の際にはその年のお返しとして、野球とラグビーのボールが熊本西高校に送り届けられた。

 九州地区の代表候補校選考会議は11月21日に開催された。九州地区各県理事長8名、九州地区高野連会長1名の計9名が出席。9名から互いの推薦校に対して様々な意見が出され、難しい判断だったが、まず津久見、熊本西、普天間の3校に絞った。その後当該県である、大分、熊本、沖縄の理事長が会議室を退室し、当該県以外の理事長と九州地区高野連会長の6名で、推薦項目別に客観的に数値化し比較。協議の結果、最終的に熊本西を九州地区代表候補校として適当であるという結論に至った。(松倉雄太 / Yuta Matsukura)

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