東京五輪で試される「おもてなし」  国際会議や大会招致は今後も挑戦

ANOCの総会に臨む(左から)JOCの竹田恒和会長、IOCのバッハ会長、安倍首相ら=11月、東京都内のホテル

 2020年東京五輪を控え、スポーツの国際会議としては過去最大規模の各国オリンピック委員会連合(ANOC)総会が11月28、29日の両日、東京都内で開催された。206カ国・地域の国内オリンピック委員会(NOC)や国際競技団体から約1400人の要人が一堂に会し、30日は五輪会場の視察ツアーも組まれて東京の準備状況を再確認。招致に尽力した日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長(71)に会議の意義や狙いを聞いた。

(聞き手は共同通信運動部次長・田村崇仁、運動部記者・長谷川大輔)

 ―ANOC総会を初開催した経緯は。

 「東京五輪の前に206の国・地域の代表者に日本に来てもらえば、各国の期待も高まり、五輪をさらに盛り上げることにつながる。そういう意味で、われわれも日本が開催できるか自ら探っていてANOCにアプローチした。既に事前に東京を視察している国もあるが、まだやはり一部。視察も兼ねて総会に参加するのは多くの国にとっては有意義な機会になる」

 ―日本のメリットは。

 「日本の大規模イベントの組織能力を見てもらえる。日本の競技団体にとっても母国で各国・地域のNOCや国際競技連盟のトップを『おもてなし』することができる。当然、そこでつながりが生まれてくる。国際社会の中で日本のプレゼンスも高められる機会になった。また2年前の方が準備の途上でいろいろ質問も出るし、状況も見せられるので、良かったかな、とは思っている」

 ―ANOCとはどのような組織と役割か。

 「国際オリンピック委員会(IOC)の総会にはIOC委員がいない国は出られない。ANOCの総会には206のNOCが参加し、大きい国も小さい国も対等に発言できる唯一の場。そこで決まったことが、世界のNOCの考えとして国際競技連盟やIOCに伝えられるのは意義がある」

東京都内のホテルで開かれたANOCの総会=11月

 ―各地の事前合宿のPRブースも設置された。

 「これは大会組織委員会側からの要望もあって実現した。各NOCに対して全国の自治体に興味持ってくれたら協力しますよ、というスタンス。直接的なやりとりも出てくる場になるし、最近は各国も動きが活発だ」

 ―東京五輪で南北合同チームの動きはどうか。

 「合同チームは編成されると思う。そういう方向に今の北と南は動いているし、それをIOC側もサポートしているから。ただ、(全競技で)本当の合同チームができるかというと、それはもう大変難しいと思う。すべての団体スポーツも半分、半分で選手を出そうとなったら、公平感の問題など競技によってもいろいろあると思う」

 ―JOCとして大会や国際会議の招致も含め、将来的な国際戦略をどう描くか。

 「そういうものには今後もどんどんチャレンジしていくべきだと思う。われわれとしては自国開催だろうが、外の開催だろうが、選手団を率いるので世界のトップを目指し、国際競技力向上を常に心掛けていく。スポーツ大国を目指す日本としては非常に重要なことだと思う。ただ、それだけでなくて、今やっている発展途上国のサポートプログラム等で国にも支援してもらっているが、国際的なスポーツの普及に協力する努力も重要。今後も続けていくべきだ。選手、役員、いろんな人材が育っていくことにつながり、スポーツの普及発展に大きく影響してくる」

 ―国際的な人材育成は。

 「JOCは国際人養成のプロジェクトを継続している。おかげさまでこのセミナーから多くの国際人も育つようになってきた。今回、国際体操連盟の会長に渡辺守成さんが就任し、IOC委員にもなった。これは非常に日本としても心強いし、今後そういう人材がどんどん育っていくことで、日本のスポーツ力全体を上げることにもつながっていくと思う」

インタビューに答えるJOCの竹田恒和会長

 竹田恒和(たけだ・つねかず) 1947年東京生まれ。馬術選手として72年ミュンヘン、76年モントリオール両五輪に出場した。01年に日本オリンピック委員会(JOC)会長に就任し、12年から国際オリンピック委員会(IOC)委員。父の恒徳氏は明治天皇の孫で、IOC委員やJOC委員長を歴任した。

 各国オリンピック委員会連合(ANOC) 1979年に創設された各国・地域の国内オリンピック委員会(NOC)の代表組織。日本オリンピック委員会(JOC)など206の国・地域のNOCが加盟する。総会が最高意思決定の場となり、東京では2020年東京五輪の準備状況の報告、札幌市が断念した26年冬季五輪招致の立候補都市による初のプレゼンテーションなどが実施された。

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