金属行人(12月18日付)

 今年を振り返ると、関西電炉メーカーで次世代に向けた投資が続いた。共英製鋼は一昨年末の米国での電炉買収に続き、今年2月にベトナム南部で港湾事業を開始。5月には同国北部の電炉を買収して日越米3極体制を拡充した。大阪製鉄も昨年1月に稼働開始させたインドネシア合弁の鉄筋・形鋼メーカーの生産拡充を図った▼国内では合同製鉄が朝日工業の買収を決め、来年2月にTOBを開始する。新潟の三星金属工業、福岡のトーカイと合わせ合同製鉄グループが強化される▼自社の生産体制強化も進んだ。中山鋼業は電気炉に最新型のスクラップ予熱設備を新設して、電力や電極の使用原単位を大幅に削減する体制を整備。コスト競争力で鉄筋メーカートップを目指す。新関西製鉄は「1製鋼・2圧延体制」の早期化を進めている。需要が伸びない平鋼市場で「身の丈を合わせる」(同社)取り組みだ▼海外展開で成長戦略を描く電炉は共英、大鉄と大和工業。いずれも関西勢。一方、合同のように国内グループの拡充で市場占有力を高めて成長戦略を描く。コスト競争力を磨いて収益力を高めていく中鋼のような戦略もある。成長戦略は一方向ではないが、ここ数年の取り組みが5~10年先の財産になる。

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