「脚本家 市川森一の世界」刊行 ゆかり深い16人つづる 

 長崎県諫早市出身の劇作家、市川森一(1941~2011年)の足跡と業績を収めた論集「脚本家 市川森一の世界」が刊行された。ヒットドラマの脚本を手掛けた当時の秘話が、ゆかりの深い16人の文章や語りでつづられ、豊かな才能と古里への愛情を今に伝えている。
 市川は1966年、脚本家デビュー。特撮ものや青春ドラマ、時代劇など多彩なジャンルで知られ、「大人のメルヘン」と呼ばれる独特の世界観から人間の真実をあぶりだす脚本で魅了した。諫早市立諫早図書館や長崎歴史文化博物館の名誉館長を務めるなど本県の文化振興にも尽くした。
 論集は、親交のあった森泰一郎・前鎮西学院長や放送評論家の鈴木嘉一さんらで組織する刊行委員会が編集、全5章で構成。鈴木さんが全体像を解説した後、歌舞伎俳優の松本白鸚さんら7人が、作品に懸けた市川の情熱や苦労を寄せた。
 三谷幸喜さんら脚本家4人は、市川作品の特徴だった「ファンタジー」の魅力や脚本アーカイブズ活動などを評価。俳優の役所広司さんら4人が、古里を歩き、注いだ愛情をつづった。刊行委員による座談会や70年の生涯をたどる24ページの巻頭グラビア、年譜も収録した。
 A5判、338ページ。3024円。長崎文献社(電095・823・5247)。

刊行された論集「脚本家 市川森一の世界」

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