「エースになろうなんて、これっぽっちも思っていない」 栃木ブレックス ♯10 竹内公輔

安齋竜三HC(ヘッドコーチ)体制、2年目となる今シーズン。ブレックスはリーグ首位を争う好調な滑り出しを見せた。今シーズンのブレックスは、日替わりでエースが現れる理想的なスタイルになりつつある。中でもライアン・ロシター、ジェフ・ギブスという2人の外国籍選手の華やかなプレーや、若手選手たちの目覚ましい成長が印象に残る。だが、多くの選手が輝きを放つ裏側で、数字には表れない竹内公輔の奮闘があることを決して忘れてはいけない。


―これまで15勝2敗(11月20日時点)ですが、好調の要因はどんなところにあると思いますか。

ほかのチームはメンバーのテコ入れがありましたが、うちは昨シーズンとほとんどメンバーが一緒ということもあって、スタート時の完成度がほかのチームより高いのかもしれません。もう一つは、昨シーズン、やり続けてできなかった部分を、オフの時期に全員が取り組んでいたので、それがいい形で出ているのかなと思います。

 

―ブレックスの序盤の大一番といえば、10月17日のアルバルク東京戦だと思います。昨シーズンは1勝もできなかった相手に、延長戦の末、勝利を収めました。

 東京とは紙一重でした。東京もほとんどメンバーが変わらず、監督も続投。ほかのチームよりは早い段階でチームができていた同士の対戦でした。そういう意味では、お互いのことを分かりあっていた中でのゲームだったので、難しい部分はありました。かなりギリギリでしたけど、アウェーで勝てたのは良かったです。形はどうあれ序盤でああいう強いチームに1勝できたのは自分たちの自信になったし、今年はやれるんだ!という思いを全員から感じられました。

 

―ところが、その3日後に行われたホーム、北海道戦(10月20日)はわずか2点差で敗戦。その後、アウェーの秋田戦、北海道戦は、田臥勇太選手、遠藤祐亮選手を欠く中で勝利しました。

 この勝利は大きかったですね。結構きつかったですけど、人数が少ない中でもやることをやれば勝てるんだということが分かって良かったです。残っているメンバーからしたら、「彼らがいないから負けた」と言われるのは嫌なんですよ。前に、ライアンが冗談なのか本気なのか分からないような口ぶりで、「ジェフがいないからって負けるのは嫌だ」と言っていたんですけど、本当にその通りだと思いました。実際、ジェフが出られなかった北海道戦(10月20日)は負けましたし。だからそういうことを言われないように、ケガ人がいようが何としてでも勝つ、という気持ちが大事だと思います。逆に、やることをやって負けたのなら納得できるので。ある程度いいディフェンスをして、シュートチェックにもしっかり行って、それでも相手にシュートを決められて負けたら仕方ないと思います。

 

―今シーズンのブレックスが昨シーズンと大きく違う点はどんなところにありますか。

 ライアンがチームを引っ張ってくれているというのが大きいですね。昨シーズンと違って積極的にリングにアタックしてくれているし、彼はパスもうまいので、ディフェンスを引き付けてくれる。だから、僕たちはすごくやりやすいです。

昨シーズンは、どちらかというと「パスファースト」という部分があったかもしれないけど、今シーズンは「アタックファースト」でやってくれています。それが相手にとっても嫌だと思うし、ルールが変わってライアンもジェフも40分間常にコートに立てるようになったのでリズムが取りやすくなって、それがいい方向にいってアタックモードになっているんだと思います。ただ心配なのは、僕がこのチームに来る前も彼はそういうスタイルでしたけど、その時はそれでケガをしたので、ケガだけは注意してもらいたいし、そうならないようにできるだけ僕もフォローしていきたいです。

 

―橋本晃佑選手や山崎稜選手など、昨シーズンはケガで出場機会が少なかった選手の活躍も目立つようになりました。

 彼らは1年間このチームでプレーして、自分はこうすれば生きるんだということを理解したんだと思います。山崎なら、周りが(シュートチャンスを)作ってくれるから、チャンスを逃さずにいい形でノーマークやアウトサイドのシュートをしっかり決めるとか、橋本は3番(スモールフォワード)で出ることが多いので、そこで何を求められるのかを理解してプレーできていると思います。橋本はサイズがあるからリバウンドもいけるし、相手のミスマッチを突いてポストアップもできる。個人的には、以前チームにいたトミー(ブレントン)がやっていたようなプレーをしてもらえたらと思っています。

トミーは、パスやリバウンドを強みとした選手でしたけど橋本はシュートも打てるので、そういう強みを生かしたプレーをしてほしいですね。あとは、千葉ジェッツの小野龍猛選手のポストアップはどのチームも止められていないので、あれを防げる選手になってほしいです。逆に言えば、小野選手のように、ポストで起点になるようなプレーができたら、ほかのチームからしたらかなり厄介ですよね。シュート力はあるから相手をいじめるというか、ミスマッチを突くようなプレーに期待したいです。

 

―開幕前には喜多川修平選手のケガもあり、得点面を心配する声もありましたが、蓋を開けてみれば多くの選手がまんべんなく点を取っていますし、チームとしてはリーグでもトップクラスのアシストの多さ、ターンオーバーの少なさと、素晴らしい数字が出ています。

 ターンオーバーがそこまで少ないのは、驚きました。昨シーズンから同じようなことをやっているのがいいのかもしれないですね。トランジションがダメならボールを動かしてスコアするといううちのスタイルがハマっているというか。それを理解しながらみんなやれているなと感じます。アシストに関しては、ライアン、田臥さん、ジェフ、ナベ(渡邉裕規)、(鵤)誠司、遠藤…と、このチームの選手はみんなパスがうまいんですよ。もう一つは、まだそんなに強いチームと対戦していないというのもあるのかもしれません。千葉や川崎、三河、琉球にどれだけできるのかはこれからです。でも、今はそういうチームと対戦するのがすごく楽しみです。

 

―今シーズンは短期間で平日の試合も多いですが、体調管理で気を使っている点はありますか。

 昨シーズンよりセルフケアを増やしました。日曜の試合の後は、スーパー銭湯に行って、長い時間水風呂に浸かって体の熱を取り除いたり、サプリメントを飲んで寝たり。サプリメントの量は、確実に増えました。

 

―開幕前には、「あまり無理しても最後までもたないので、頑張りすぎないという気持ちを持たないと」と話していましたが。

 そうですね。でも、チームの状況的にだいぶ貯金ができたので、精神的にはいい意味でリラックスはできています。昨シーズンの最初の頃は負け過ぎていて、ずっと「勝たなきゃ」って力が入っていたんですけど、今はそういうのがないので、その分疲れも少ないのかなと思います。

 

―チームが負けていると、ちょっと無理してでも出ちゃおうかなって気持ちになりますものね。

 こう言ってても、結局は負けたくないので120%でやっちゃうんですけど(笑)。少なくても今みたいに、練習が終わってオフモードの時は、昨シーズンよりはすごくリラックスできています。

 

―今後、どのようなプレーをファンに見てほしいですか。

 今シーズンは外国籍選手とマッチアップする機会が格段に増えたので、そういう時に「日本人でも負けないんだぞ」というところを、ぜひ見てほしいです。


栃木ブレックス ♯10 竹内公輔(たけうち・こうすけ)

1985年1月29日生まれ、大阪府出身。206㎝、98㎏。

慶應義塾大学時代にインカレ優勝、関東1部優勝、リバウンド王を3年連続で獲得。2007年アイシンシーホースに入団。新人王、ブロックショット1位(4年連続)などを獲得。11年トヨタアルバルク、14年広島ドラゴンフライズに移籍し、16年よりブレックス。

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