野菜の安値

 おっきいな、と心でつぶやく。手に持てば、ずしんと重そうなハクサイが税抜きで1個150円ほどで、キャベツは1個100円を切っている。レタスはもう少し安くて、ダイコンは1本80円ほど。近所のスーパーに並ぶ野菜のえらく安いこと▲全国的にそうらしい。11月の気温が平年よりも高めだったり、日照時間が長かったりで、例年の同じ頃よりも成育がずっと良いのだという▲安値にいささか驚くのは、この1年、野菜といえば「高い」と思いがちだったせいだろうか。昨年、全国の産地が台風や長雨にやられ、県内産も初冬からの冷え込みでよく育たなかったため、今年1月ごろの野菜は仰天するほど高かった▲夏は夏で、猛暑に少雨も重なって成育が悪く、最も高いときでキャベツは1個300円ほどと、これもまた仰天の高値をつけた。「例年にない」「尋常ではない」といわれることの多い近年の気象を、野菜の値段はよく表す▲安値は今が底らしく、年末、1月は上がるとみられる。この折に、安いし、品もいいとされる野菜をたっぷり頂いておきたい▲ちょうど鍋料理の季節でもある。〈舌焼きてなほ寄鍋(よせなべ)に執しけり〉水原秋桜子。ぐつぐつ言うのを「あちあち」と順張るのは冬の妙味だろう。定番のハクサイをはじめ、手に入りやすい野菜が出番を待つ。(徹)

© 株式会社長崎新聞社