10年前はこんなに弱かった!? 2008年のソフトバンクを振り返ると…

2008年まで14年間ホークスの指揮を執ったソフトバンク・王貞治会長【写真:Getty Images】

松中、小久保が下り坂に 本多、川崎、松田以外は固定できず

 10年ひと昔という。10年前の野球界はどんな様子だったのか。2008年の野球界を数字で追いかけよう。今年の日本一、ソフトバンクの10年前は?

2008年 福岡ソフトバンクホークス 64勝77敗3分 勝率.454 6位

 王貞治監督率いるソフトバンクは、2005年以来、毎年プレーオフ、CSに進出する3位以上の成績を挙げていたが、この年は5月終了時点で5割と足踏みし、西武の独走を許す。2位以下は混戦状態となり、8月には2位に上がるが、9月、10月で6勝21敗と大きく負けが込み、1996年以来12年ぶりの最下位に沈んだ。ホークス監督になって14年目の王監督はこの年を最後に退任。秋山幸二ヘッドコーチが次期監督へ昇格した。

○打線 左端の数字は打順、打率の横の()は順位

1二・本多雄一(24歳) 107試454打132安3本38点29盗 率.291(12)
2遊・川崎宗則(27歳) 99試424打136安1本34点19盗 率.321(3)
3指・松中信彦(35歳) 144試538打156安25本92点3盗 率.290(13)
4一・小久保裕紀(37歳) 106試383打97安20本56点1盗 率.253
5外・大村直之(32歳) 79試245打74安2本22点7盗 率.302
6三・松田宣浩(25歳) 142試551打154安17本63点12盗 率.279(18)
7外・長谷川勇也(24歳) 71試221打52安4本24点2盗 率.235
8外・柴原洋(34歳) 96試339打94安3本34点2盗 率.277
9捕・高谷裕亮(27歳) 62試189打34安2本13点0盗 率.180
外・多村仁(31歳) 39試149打45安3本15点0盗 率.302
内・仲澤忠厚(26歳) 58試132打32安0本10点0盗 率.242
外・中西健太(22歳) 59試136打34安3本14点1盗 率.250
捕・田上秀則(28歳) 52試144打38安4本13点0盗 率.264
遊・森本学(30歳) 54試133打32安0本8点1盗 率.241

 チームを引っ張った3冠王の松中と小久保に衰えが見えた。二遊間は本多、川崎コンビ。三塁には3年目の松田が定着したが、他のポジションは固定できず、日替わり打線となっていた。外国人打者のレストビッチも期待外れ。10年後の陣容から見れば信じられないような、決定力不足の打線だった。

左腕3本柱は奮闘も先発4番手以降、救援も決め手なく…

○投手陣 防御率の横の()は順位

先・杉内俊哉(28歳) 25登10勝8敗0SV0HD 196回 防御率2.66(5)
先・和田毅(27歳) 23登8勝8敗0SV0HD 162回 防御率3.61(13)
先・大隣憲司(24歳) 22登11勝8敗0SV0HD 155回2/3 防御率3.12(6)
先・ガトームソン(31歳) 18登5勝7敗0SV0HD 100回 防御率4.05
先・新垣渚(28歳) 15登4勝6敗0SV0HD 92回2/3 防御率4.18
先・ホールトン(29歳) 28登4勝7敗6SV0HD 84回1/3 防御率4.27
先・大場翔太(23歳) 13登3勝5敗0SV0HD 78回 防御率5.42
先・パウエル(32歳) 12登2勝6敗0SV0HD 66回1/3 防御率5.29
中・ニコースキー(35歳) 39登2勝4敗2SV7HD 42回2/3 防御率4.64
中・久米勇紀(23歳) 40登4勝1敗3SV15HD 36回 防御率3.25
中・三瀬幸司(32歳) 44登2勝1敗0SV5HD 35回 防御率4.11
中・小椋真介(28歳) 29登3勝0敗1SV6HD 33回1/3 防御率5.40
中・高橋秀聡(26歳) 20登1勝1敗1SV3HD 31回 防御率4.06
中・柳瀬明宏(25歳) 30登1勝2敗3SV6HD 29回2/3 防御率5.16
抑・馬原孝浩(27歳) 21登0勝2敗11SV2HD 19回1/3 防御率2.79

 松坂世代の杉内、和田に大隣と、3人の左腕が3本柱。しかしそれ以下の先発が定まらず、5人の投手がローテーションを出たり入ったりした。救援陣は、前年セーブ王に輝いた馬原が故障で出遅れ、先発のホールトンや久米、柳瀬などが臨時に抑えを務める。馬原は7月には復帰したが、中継ぎ投手もパッとせず、勝利の方程式は作れなかった。

 この顔ぶれでは松田宣浩、長谷川勇也、高谷裕亮、和田毅が現役。杉内俊哉は巨人に移籍して今年引退を表明した。大隣憲司もロッテに移籍して引退を表明。

ドラフトでは攝津、現巨人の立岡らを指名

○ドラフト会議

1位 巽真悟(投手)
2位 立岡宗一郎(内野手)
3位 近田怜王(投手)
4位 有馬翔(投手)
5位 攝津正(投手)
6位 金無英(投手)
7位 鈴木駿也(投手)

育成
1位 内田好治(投手)
2位 二保旭(投手)
3位 柳川洋平(投手)
4位 猪本健太郎(捕手)
5位 堂上隼人(捕手)

 秋山新監督がドラフト会議に臨み、1巡目で東海大相模の大田泰示を指名したが巨人にくじで敗れ、外れ1位で近畿大の巽を指名。この年の新人では、攝津が即戦力のセットアッパーとして2009年に活躍。のちに先発に転向して実績を残したが、今季戦力外となった。チームは最下位だったが、ファームはウエスタンで優勝。若手は台頭しつつあった。

 ソフトバンクは監督を退き、フロントのトップになった王貞治会長兼GMのもと、本格的な育成システムの構築に着手。2011年には3軍を創設するなど、チームは強化され、以後10年で9回ポストシーズンに進出。日本一にも5度輝いている。そういう意味では、最下位になったこの年が、強豪ソフトバンクの原点とも言えるだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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