IWC脱退「食文化守る姿勢示した」と長崎県関係者 国際社会からの批判に不安も

 政府が国際捕鯨委員会(IWC)脱退の方針を固めたことについて、国内有数の鯨肉消費地である長崎県の関係者は「鯨食文化を守るための姿勢を示してくれた」と好意的に受け止めた。一方で国際社会からの批判や今後の鯨肉供給への影響に対する不安の声も上がった。
 長崎くじら食文化を守る会の川島明子会長は「県内では独自の調理法や食べ方が受け継がれている。伝統と文化を守る方向に動いてくれた」と歓迎。一方で、脱退により好漁場の南極海で捕鯨ができなくなると指摘し「質のいい鯨肉が減ったり、捕鯨従事者の雇用や加工技術を保てなくならないか」と懸念した。
 長崎市万屋町の鯨専門店「くらさき」の小嶺信介社長は「不安が大きいが、商業捕鯨が再開できれば鯨肉の値段が下がり、消費者が手に取りやすくなる」と期待を込めた。
 かつて捕鯨母船に乗っていた新上五島町有川郷の原博光さん(76)は「決められた重量以内で捕獲しても、環境保護団体から批判が出る。脱退により国際的な批判が高まらないだろうか」と気をもんだ。
 東彼東彼杵町は鯨肉の流通拠点として発展した歴史を踏まえ、鯨を活用した地域振興に力を入れている。11月には「全国鯨フォーラム」を開いた。渡邉悟町長は「IWCは協議の場として機能していない。政府はノルウェーなど捕鯨支持国と結集し、強い方針を打ち出す時期だ」と求めた。
 東彼杵町と鯨の歴史について研究している東彼杵町史談会の磯木元司さん(73)は「国内の関心を高めるため、歴史を知り、食文化に親しむような働き掛けが必要」と提言した。

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