「プーチンさん、私を当てて!」 会見で記者1700人が涙ぐましい努力

By 太田清

モスクワで記者会見するロシアのプーチン大統領(タス=共同)

 毎年の恒例となったロシアのプーチン大統領の大規模記者会見が20日、モスクワで行われた。日本メディアの関心はもちろん、北方領土問題と平和条約交渉で、プーチン氏は沖縄県の米軍基地問題の現状に言及、同県知事が反対し、住民が撤去を求めているにもかかわらず整備が進んでいるとし、日本の主権の水準に疑問を呈するなど、例年になく厳しい対日観を示す結果となった。  

 ところで、今回14回目となる会見には過去最高となる1702人の報道関係者が取材登録したが、ニュースサイト「ガゼータ・ルー」によると、3時間46分間の会見中、プーチン氏が答えた質問は86だけ。質問者を選ぶ権利はプーチン氏と、報道官のぺスコフ氏にあることから、会場では指名してもらおうと激しい“目立ち合戦”が行われた。 

 ニュースサイト「ニュース・ルー」によると、多くのジャーナリストが所属する報道機関名やその地域、質問内容などを書いたプラカードを持ち込み会見場で掲げ注目を引く作戦に。大統領府側は事前に、撮影や生中継の邪魔になるとしてA3サイズ以上のプラカードを持ちかけないように呼びかけていた。 

 アジア中央部のトゥバ共和国の記者は、休暇で訪れたプーチン氏が上半身裸で釣りをする姿を撮った写真とともに「プーチンは(淡水魚の)カワカマス」と書いたプラカードを掲げた。「休暇当時のことを思い出してもらうことで何とか当ててもらって、その後は地域の鉄道建設などまじめな質問をしたかった」と動機を語った。 

 さらに、プラカードだけでは不十分と、地方の民族衣装を着たり、奇抜な髪形にしたり、ロシアの民話の雪姫の恰好をしたりする記者も。タンバリンやホッケーのヘルメットを持ってきたり、ボクシングのグローブを着けたりした人もいて、大統領の関心を引くための涙ぐましい努力が行われたという。筆者もかつて、プーチン氏の会見に出席、袴姿こそしなかったものの、当ててほしいとの記者たちの気持ちはよくわかるが、それにしても・・・。 (共同通信=太田清)

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