舞台通して初心にかえれた 俳優、映画製作者 本田真穂

本田真穂 2009年来米。今年はオフブロードウェーの舞台「Time’s Journey Through a Room」、ドラマ「Maniac」(ネットフリックス)に出演。主演、プロデュースした短編映画「First Samurai in New York」が数々の映画賞を受賞した。インスタグラム@mahohonda_

俳優としては、オフブロードウェーの「Time’s Journey Through a Room」の公演、ネットフリックス制作ドラマ「Maniac」への出演。主演、プロデュース作品では、短編映画「First Samurai in New York」が12の映画祭で上演され四つの賞を受賞、ウェブドラマ「報道バズ」のクラウドファンディングの成功もあった。いかにも飛躍の年に見えるが、自身は、「特別という意識はあまりない」という。目の前にあることに全力で挑み、コツコツ積み上げる姿勢は来米当初から変わらない。

ただ、「Time’s~」は、「1年にいくつか、『これを取れなかったら俳優を辞めた方がいい』と思う仕事があるのですが、その一つでした」と振り返る。数カ月全力で取り組み、文字通り体力勝負。約6キロほど体重を減らし、周囲からそれを指摘されて初めて、「今年は頑張ったのかな」と思ったと笑う。

「Time’s Journey Through a Room」の舞台

日本での芸能活動を経て、2009年に演技の勉強のため来米し、来年6月でちょうど10年になる。

「初めに目指していた場所、考えていたことはあまり実現していない。自分で何かを、日本向けに何かを作るとも思っていなかった」という。

舞台演技を学校で学んだ後、ブロードウェーの舞台のオーディションも受けたが、成果が出ず、活動を映像に絞った。「組合員が優先だったり、アジア人の役が少なく、オーディションすらそうそう受けられないって、10年前に言われてたら挫けて帰っていたかな。それが分からなかったし、日本の仕事をすべて辞めて来たことを無駄だと思いたくなかったし、不確定だからこそパワーが出て続けてきた」

「報道バズ」の撮影現場

今回の舞台への出演は特別な時間だった。「映像の現場はシーンの感情のつながりもばらばらで撮影します。でも舞台は毎回一貫したジャーニーを楽しめるのがぜいたくな時間でした。体力のなさとか、課題も感じる一方で、舞台演技の楽しさも思い出しました」

「First~」の撮影は2年ほど前、今観ると「演技も殺陣も、自分の実力以上のものが映っている」と感じる。「監督、共演者、そして殺陣(たて)を指導した香純恭さんたちチームが映画のために力を尽くしてくれたんだと思うと、謙虚な気持ちになった」

初心にかえれたことがこの1年で一番大きな成果かもしれないという。これまで活動の節目ごとに自身のすべきこと、立ち位置を確認し、そのたびにモチベーションを新たにしてきた。「ちょっとずついろいろ動いている」と実感はある。

今後も目の前のことに全力で挑む姿勢を崩さず、俳優業にもプロデュース業にもますます力を入れていきたい。

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