スマホから子どもを守れ!子ども向けスマホの正しい選びかた【子どものパソコンとセキュリティ】

これからの子どもたちにとってパソコンやスマートフォンは、私たち以上に“使えて当たり前”のデバイスです。しかし判断能力がまだ未熟な子どもたちにとって、パソコンやスマートフォンは時に危険な凶器ともなるため、子どもに使わせる際にはしっかりとした「子どものためのセキュリティ」が必要です。第一回は、スマホのセキュリティです。

2020年、小学校プログラミング教育が始まる

文部科学省で取りまとめられた2020年の小学校プログラミング教育必修化まで、いよいよ残りわずかとなりました。

小学校プログラミング教育は、一般には誤解されている例もあるようですが、小学生に難解なプログラミング言語を学ばせたり、プログラマーとなることを目的とする教育ではありません。その目的は「プログラミング“的”思考」、つまり日常生活を含めたどんな分野においても普遍的に必要とされる「問題解決のための論理的思考力」を養うこと。つまりプログラミング教育を受けるからと言って、これからの子どもたちが皆、パソコンやスマートフォンの専門家になるわけではありません。

とはいえ、これからの子どもたちにとって、パソコンやスマートフォンは間違いなく、私たち以上に不可欠な存在となっていきます。本サイト利用者の方々の多くは、パソコンが珍しくない学生時代を送り、成人するころには携帯電話を入手してインターネットがいつでも利用できるようになった最初の世代です。しかしプログラミング教育を受け、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)に囲まれて育つこれからの子どもたちはレベルが違い、ICTを肌感覚で理解し、インターネットを目や耳と同様に使いこなす世代となっていくからです。

ですから、そんな子どもたちからパソコンやスマートフォンをむやみに遠ざけることは、交友関係を著しく狭めてしまうことになりかねませんし、将来に悪影響をもたらす可能性すらあります。プログラミング教育の有無やその内容とは関係なく、これからの子どもたちにとってパソコンやスマートフォン、インターネットに“慣れる”、すなわち「STEM教育」(Science, Technology, Engineering and Mathematics )は、必要不可欠だと言えます。

子どもはパソコンやスマートフォンに慣れる必要がある

子どもにとっては危険なパソコンとスマートフォン

これからの子どもたちには「STEM教育」が極めて重要です。しかしながらパソコンやスマートフォン、インターネットは、非常に便利な利器である一方で、とくに判断能力が未熟な子どもたちにとっては極めて危険な存在でもあります。

インターネット上にはポルノや薬物のような有害情報が溢れていますし、「学校裏サイト」等での陰湿ないじめや、出会い系サイト/アプリ経由で犯罪に巻き込まれる子どもは後を絶ちません。それに加えて、友人との連絡やゲームでスマートフォンが手放せなくなる「スマホ依存症」は、今や世界共通の社会問題となっています。

ですから、これからの子どもたちにパソコンやスマートフォンを与える際には、マルウェアなどの対策とはまったく異なる「子どものためのセキュリティ」が絶対に必要です。それに加えて、「子どものためのセキュリティ」は、子どもの年齢層によって制限内容を細かく調整していく必要があり、これはかなり大変な作業となります。

では、「子どものためのセキュリティ」は、実際にはどのように守ればいいのでしょうか。子どもたちが初めて手にする「自分のICT機器」は、多くの場合、携帯端末でしょうから、まずは携帯端末の「子どものためのセキュリティ」を考えてみます。

ICTは子どもにとって凶器ともなり得る

小学生以下なら「キッズケータイ」は有力な選択肢

子どもたちに携帯端末をもたせることは、親との連絡手段を確保できるという意味で非常に便利ですし、いざという時にはGPSを利用した現在地確認機能が役立ちます。それに加えて、防犯ブザー機能が付いている端末なら、万一の対策としても極めて有効なので、小学生以下のお子さんであれば防犯ブザー機能付きの子ども用端末、いわゆる「キッズケータイ」は有力な選択肢のひとつです。

「キッズケータイ」は、インターネット閲覧機能をもたず、電話帳登録外の発着信不可と、もっとも強い制限レベルの携帯端末なので、子どもに与える携帯端末が「キッズケータイ」であるなら、「子どものセキュリティ」はとくに気にする必要はありません。

ドコモのキッズケータイ画像参照:https://www.nttdocomo.co.jp/product/kids_junior/f03j/index.html?icid=CRP_PRD_kids_junior_to_CRP_PRD_F03J
ソフトバンクのキッズフォン 画像参照:https://www.softbank.jp/mobile/products/keitai/kids-phone/
auのマモリーノ4画像参照:https://www.au.com/mobile/product/featurephone/mamorino4/

ただし、「キッズケータイ」は12歳以下の子どもしか利用できないため、中学生以上は利用できません。また、GPSの現在地確認機能を利用するには追加料金がかかる、親と同キャリアの必要があるなど、いくつかデメリットもあります。

それに加えて現在では、とくに都市部では小学生でもスマートフォン所持率が4割を超えており、今後も所持率は増えていくと予想されるため、地域や子どもの年齢によっては交友関係の障害になってしまう可能性があります。

子どもの携帯電話/スマートフォン所持率

※東京都青少年・治安対策本部「 」より

小学生高学年以上なら「ジュニアスマホ」

「キッズケータイ」は、「子どものためのセキュリティ」が非常に高く安全ですが、ICT機器としての機能はほぼ利用できません。ですから、「キッズケータイ」は便利な道具ではありますが、「STEM教育」としてはあまり意味をもちません。

また前述のスマートフォン所持率4割という数値は、小学生“全体”の数字であり、都市部の小学生は高学年になると6割、中学生になると実に8割以上がスマートフォンをもつようになります。そのため、地域にもよりますが小学校高学年になると、「キッズケータイ」では交友関係に支障をきたしはじめる可能性があります。周囲の友人たちのスマートフォン所持率が高まってきたなら、“スマホデビュー”させてあげるほうがいいでしょう。

ただし、小学校高学年から中学生をメインターゲットとする制限レベルの高いスマートフォン、いわゆる「キッズスマホ」「ジュニアスマホ」は、実は意外に選択が難しいのです。

選択が難しい「ジュニアスマホ」

まず大手3キャリアですが、大手3キャリアの「ジュニアスマホ」に対するスタンスは、実はキャリアによってかなり異なります。

ドコモはかつて、「スマートフォンforジュニア」という「ジュニアスマホ」を販売していましたが、2018年現在は販売と新規受付を終了してしまっており、今では利用できません。ではドコモの「ジュニアスマホ」はどうなっているのかというと、ドコモでは「らくらくスマートフォン」が「ジュニアスマホ」を兼ねているという形になっています。

次にソフトバンクですが、ソフトバンクは「ジュニアスマホ」を端末としてではなく、「ジュニアスマホ」という名のサービスとして提供しています。つまり対応端末が限定されますが、キャリアショップで通常のスマートフォンをカスタマイズし、「ジュニアスマホ化」する形で提供しています。

最後にauですが、auは大手3キャリアの中では唯一、「 」という「ジュニアスマホ」を販売しています。

大手3キャリア唯一のジュニアスマホ端末、au「miraie f」

一方、大手3キャリア以外では「MVNO」、いわゆる「格安SIM」で、TSUTAYAが「 」の名称で「ジュニアスマホ」を販売しています。

「TONEモバイル」は、データ通信速度が遅いというデメリットがあるものの、大手3キャリアの「ジュニアスマホ」と比べると料金が割安です。また「MVNO」ではありますが、大手3キャリアの「キッズケータイ」やauの「miraie f」と並んで「公益社団法人全国子ども会連合会」の「推奨マーク認定商品」となっているスマートフォンでもあり、「子どものためのセキュリティ」関連機能は大手3キャリアと同等、あるいはそれ以上に充実しています。

「MVNO」の「ジュニアスマホ」、TSUTAYA「TONEモバイル m17」

現行の「ジュニアスマホ」には、通常必要とされる「子どものためのセキュリティ」のための機能は、おおむね問題なく備わっています。「STEM教育」を考えるなら、もちろん各種制限を強めに設定する必要はあるものの、「キッズケータイ」をスキップして最初から子どもに「ジュニアスマホ」を与えるのも、ひとつの選択肢です。

最初から普通のスマートフォン、という手もあるが……

「キッズケータイ」は比較的安価ですが、「ジュニアスマホ」の利用料金は多くの場合、通常のスマートフォンとさほど変わらず、その上、端末購入代金も必要になってしまいます。それに加えていわゆる“2年縛り”のような契約上の縛りがあるため、状況に応じて任意のタイミングで通常のスマートフォンに切り替えるのが難しいという問題もあり、親御さんの中には自分が以前使っていた古い端末に「格安SIM」をセットして子どもに与えるような例が、しばしば見られます。

たしかにこれは、費用をもっとも抑えられる方法ではあります。ですが「子どものためのセキュリティ」という点から見ると、これはかなり問題が大きいやり方です。

「古い端末+格安SIM」は安いが、非常に危険

子どもに与えるスマートフォンが「最新のiOSにアップデート可能なiPhone」の場合は、たしかにこの手法もアリです。iPhoneには、OSレベルでさまざまな端末利用制限機能が備わっており、適切に機能制限を設定できれば、専用の「ジュニアスマホ」とほぼ同レベルの安全性を確保できるからです。

ただし、iPhoneに「適切な設定」をするには、しっかりとしたiPhoneの知識が親側に必要です。

iPhoneはOSレベルで利用制限をかけられるので、比較的安全

一方、子どもに与えるのが「Androidスマートフォン」の場合、これは要注意です。Androidスマートフォンの利用制限機能は限定的で、OSだけでは「子どものためのセキュリティ」を守り切るのは難しいからです※。

※ソフトバンクの「ジュニアスマホ」サービスのように、キャリアショップなどで端末を「ジュニアスマホ化」してくれるようなサービスを除く。

もちろん、キャリアが提供する「フィルタリングサービス」やサードパーティー製のセキュリティアプリをフル活用すれば、安全性はある程度確保できます。しかしこの種のサービスやアプリは、OSベースで動いているわけではないため“抜け道”があり、Androidスマートフォンで「子どものためのセキュリティ」をきちんと確保するのは、一般に考えられているより遙かに困難です。

冒頭で述べたように、プログラミング教育を受け、ICTに囲まれて育つこれからの子どもたちの知識やスキルは、親世代の想像を容易に凌駕してきます。専用の「ジュニアスマホ」を利用する場合であっても、「子どものためのセキュリティ」に関する知識は必須で、子どもに与えるパソコンやスマートフォンは、親がしっかり管理し、適切に運用する必要があります。

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