2019年シーズンに向けドライバー移籍市場が活発化しているBTCCイギリス・ツーリングカー選手権は、大規模なチーム体制変更をアナウンスしていたAmD Tuning.comチームに、タイトル争いを経験した元ランキング2位の実力者サム・トルドフが加入。2018年チーム王者のウエスト・サリー・レーシング(WSR)からはロブ・コラードが離脱し、新たにトム・オリファントを迎え入れることが発表された。
2019年に向け体制刷新を行ったAmDは、これまでのMG6 GTに代えFK2ホンダ・シビック・タイプRの2台を”コブラ・スポーツAmDレーシング”として、また既存のアウディS3セダンはリビルドを敢行した上で”トレード・プライス・カーズ・レーシング”として、2台を走らせるプロジェクトを進めている。
そのAmDに電撃移籍を発表したトルドフは、WSRに所属した2016年シーズンには最終戦までチャンピオン争いを展開し惜しくもドライバーズランキング2位に留まると、翌年の参戦休止を経て2018年からシリーズに復帰してモーターベース・パフォーマンスに加入。トム・チルトンとともに自身久々のFFツーリングカーとなるフォード・フォーカスRSをドライブしてきた。
その復帰シーズンでランキング11位に入ったトルドフに加え、MG6 GTで印象的な走りを披露したロリー・ブッチャーがチームに残留し、ともにシビックRをドライブすることになり、チーム代表のショーン・オランビーは「BTCCグリッドのなかでも非常に理想的なドライバーペアリング」だと自信をみせている。
「2台の強力なホンダ・シビック・タイプRを導入すると決めた瞬間から、我々はこのマシンのポテンシャルを最大限引き出すことが可能なドライバーとの契約だけに焦点を当ててきた」とオランビー。
「サムのような実力を持つビッグネームを招くことは、チームにとって最高の報せだ。ホンダをドライブして理想的なリザルトを持ち帰ってくれると期待しているし、これまで3つのビッグチームを渡り歩き、レースでの勝利のみならずタイトルに値する速さがあることを証明してきた」
「マシンとドライバーだけでなく、チームとしてのエンジニアリング面も強化しており、このプログラムを真剣に推進していることを示すように、ファクトリーの設備も大きく増強した。狙うはチャンピオンシップのみであり、その野望をコース上で具現化したいと思っている」
一方のトルドフは「この移籍を驚いている人もいるだろうし、チーム力を考えれば”負け犬の選択”だと言う人もいた」としながら、決断に至った背景を説明した。
「もちろん、最初から僕のレーダーにAmDの名が挙がっていたわけではないけれど、『いつの日かホンダでレースをしてみたい』という考えは持っていた。なんと言っても、僕をタイトル争いで負かしたゴードン・シェドンが乗っていたマシンそのものだからね」と笑うトルドフ。
「コブラ・スポーツAmDは、マシンを購入しただけでなくファシリティも含め組織のエンジニアリング面を大幅に強化すべく大規模投資を行っている。これで環境的な言い訳はなくなり、マシンは昨季の最終戦で(ユーロテック・レーシングのジャック・ゴフが)ポールポジション獲得から勝利を挙げた戦闘力も持っている。2019年の狙いはひとつしかないよね」
トルドフ、ブッチャーの所属する”コブラ・スポーツAmD”に対し、新たにパープルカラーとなる予定のアウディS3セダンを走らせる”トレード・プライス・カーズ・レーシング”には、かつてチームHARDでフォルクスワーゲンCCのステアリングを握った24歳のジェイク・ヒルが加入。
そして2018年はシシリー・モータースポーツのメルセデス・ベンツAクラスでBTCCデビューを飾ったトム・オリファントが、名門WSRに移籍することも発表された。
現在28歳のオリファントはジネッタGT4スーパーカップでのタイトル獲得経験やポルシェ・カレラカップ、ブリティッシュGT選手権での実績もあり、後輪駆動のBMWでも「最初から競争力を発揮できるはずだ」と自信を見せている。
「2019年、BTCC2年目のシーズンでWSRに加入できるなんて夢のような話だ」と、喜びを語ったオリファント。
「2018年のチーム王者はもとより、過去10年で10のタイトルを獲得する文字どおりのチャンピオンチームだ。昨年は前輪駆動のメルセデスを経験でき、これまでのリヤドライブとの蓄積を合わせて、このBMW125i Mスポーツをすぐに体得したい。そしてWSRのドライバー誰もが満喫したような結果を、僕も追体験できるように全力を尽くしたい」
この移籍劇により、2018年王者コリン・ターキントン、2013年王者アンドリュー・ジョーダンとともに長年WSRで戦ってきたロブ・コラードがチームから放出される形となり、在籍11年で13勝、56の表彰台を獲得した実力者は他チームへの移籍か、自らのチームを立ち上げてのBTCC参戦かを模索する状況となっている。