岩隈が投手3冠&沢村賞&MVPもリーグ5位 2008年の楽天を振り返ると…

08年、圧倒的な成績を残しオフにはWBCのも出場した岩隈久志【写真:Getty Images】

球団創設から4年目、生え抜きの新戦力が躍動し始める

 10年ひと昔という。10年前の野球界はどんな様子だったのか。2008年の野球界を数字で追いかけよう。楽天は創設4年目のシーズンだった。

2008年 東北楽天ゴールデンイーグルス 65勝76敗3分 5位

 4月にはチーム新の6連勝を記録。6月までは勝率5割前後を維持し、初のCS進出も期待される調子だったが、7月に5勝17敗2分と大きく負けが込み、下位に低迷。しかし9月以降のソフトバンクの失速もあって、最下位を免れた。73歳の野村克也監督は、他球団からの移籍組中心のチームで生え抜きの新しい戦力を育てようと尽力した。

○打線 左端の数字は打順、打率の横の()は順位

1遊・渡辺直人(28歳)132試470打118安0本30点34盗 率.251(26)
2二・高須洋介(32歳)123試383打108安4本45点6盗 率.282(17)
3三・草野大輔(32歳)118試328打89安3本36点2盗 率.271
4一・フェルナンデス(34歳)142試541打163安18本99点5盗 率.301(9)
5指・山崎武司(40歳)142試510打141安26本80点1盗 率.276(21)
6外・リック(36歳)134試491打163安12本71点4盗 率.332(1)
7外・中島俊哉(28歳)81試178打56安5本25点1盗 率.315
8外・鉄平(26歳)124試422打114安5本56点5盗 率.270(22)
9捕・藤井彰人(32歳)90試190打50安0本13点3盗 率.263
捕・嶋基宏(24歳)85試196打45安0本19点4盗 率.230
二・内村賢介(22歳)47試152打44安0本13点9盗 率.289
外・中村真人(26歳)49試144打42安1本12点6盗 率.292
一・セギノール(33歳)39試136打44安13本40点0盗 率.324

 チーム打率.272はパ・リーグ1位、打線は一級品だった。楽天3年目のリック・ショートが首位打者。フェルナンデスは最多二塁打(40本)と外国人選手が活躍。40歳の山崎武司も勝負強さを見せた。渡辺直人は34盗塁とリードオフマンとして活躍。捕手は近鉄出身の藤井と生え抜きの嶋のポジション争いが始まっていた。

エース岩隈が21勝をあげる活躍も…クローザー固定できず

○投手陣 防御率の横の()は順位

先・岩隈久志(27歳)28登21勝4敗0SV0HD 201回 2/3防御率1.87(1)
先・田中将大(20歳)25登9勝7敗1SV0HD 172回2/3 防御率3.49(12)
先・朝井秀樹(24歳)29登9勝11敗0SV1HD 148回 防御率4.38(19)
先・永井怜(24歳)27登6勝7敗0SV0HD 117回1/3 防御率4.68
先・ドミンゴ(33歳)23登2勝7敗0SV0HD 102回1/3 防御率3.87
先・片山博視(21歳)18登2勝7敗0SV1HD 79回 防御率3.65
兼・木谷寿巳(28歳)22登0勝3敗1SV3HD 39回1/3 防御率4.12
兼・長谷部康平(23歳)13登1勝4敗0SV0HD 35回1/3 防御率9.93
兼・一場靖弘(26歳)12登0勝3敗0SV0HD 31回1/3 防御率9.77
兼・青山浩二(25歳)41登3勝8敗4SV5HD 78回2/3 防御率3.89
中・小山伸一郎(30歳)54登3勝5敗4SV6HD 67回2/3 防御率3.72
中・川岸強(29歳)54登4勝3敗3SV13HD 55回2/3 防御率1.94
中・有銘兼久(30歳)66登2勝2敗2SV17HD 44回 防御率2.05

※兼は先発・救援を兼ねた投手

 岩隈久志が21勝。キャリアハイを記録。20勝投手は2003年のダイエー斉藤和巳、阪神の井川慶以来。岩隈は最多勝、最優秀防御率に輝き、チームは5位ながらMVPと沢村賞に輝いた。しかし、他に10勝投手はなし。前年高卒1年目で11勝を挙げ新人王になった田中将大も9勝にとどまった。

 問題は救援陣。クローザーを固定することができず、勝利の方程式の形成ができなかった。このことが中盤以降の失速を招いた。

チームリーダーとして嶋が健在、渡辺直も今季復帰

 この投打の顔ぶれでは、野手は、嶋がチームリーダーとして健在。渡辺直人はその後、横浜・DeNA、西武を経て2018年に楽天に復帰した。投手は岩隈がMLBを経て今季から巨人、田中は2013年に24勝0敗という空前の成績を残してヤンキースへ。青山浩二が変わらず楽天でプレーしている。

〇ドラフト会議

1位 藤原紘通(投手)NTT西日本
2位 中川大志(内野手)桜丘高
3位 井坂亮平(投手)住友金属鹿島
4位 井上雄介(投手)青山学院大学
5位 楠城祐介(外野手)パナソニック
6位 辛島航(投手)飯塚高
育成
1位 森田丈武(内野手)香川オリーブガイナーズ

 日本通運の野本圭を1位指名したが、中日に敗れて外れ1位でNTT西日本の藤原紘通を指名。即戦力の期待がかかったが、1年目に5勝したもののトミー・ジョン手術を受けて5年で引退。現役は辛島航とDeNAに移籍した中川大志。

 球団創設から4年目のシーズンを迎え、戦力的には着実に充実しつつあった。野村監督は翌2009年も積極的に若手を登用し2位に入り、初めてCSに進出した。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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