新連載 ミャンマーの税制・・・Part-2  「商業税の現状と留意点②」 前回、商業税の非課税に触れたが、どこの国も一定の非課税規定を設けている。ただ非課税措置を設ける場合の大きな問題は、非課税とされる資産の譲渡や役務提供を定義しなければならない点だ。定義如何によっては、かえって納税者間に不公平な取扱いをもたらす。

前回、商業税の非課税に触れたが、どこの国も一定の非課税規定を設けている。ただ非課税措置を設ける場合の大きな問題は、非課税とされる資産の譲渡や役務提供を定義しなければならない点だ。定義如何によっては、かえって納税者間に不公平な取扱いをもたらす。

新連載 ミャンマーの税制・・・Part-2  「商業税の現状と留意点②」

1.「非課税事業の判定」について

この非課税取引の定義について、その解釈や実務上の取扱で何か問題はないでしょうか。非課税取引は最新の法令では31項目規定されており、その一つに「商品運送サービス」があります。実は、フォワーダー(Forwarder)がこれに該当するのか、議論が分かれているようです。
そもそも事業の判定という問題は、外資企業にとって税務のみならず事業規制との関連でも重要です。ネガティブリスに詳細が定められておりますが、その判定如何によっては、進出断念という事態にもなりかねません。この点、ミャンマーの投資法が規定する規制対象事業は産業分類コードを採用しておりますが、商業税の非課税事業は、より個別的、具体的な規定となっております。
以下では、税務上、非課税事業の判定がどのように行われているのか、フォワーダーを例に、ごく常識的な目線から記載したいと思います。但し、極めて限られた情報しかございませんし、また税務上の取扱の最終判断は、課税当局の解釈に委ねられる部分が大きく、参考としての記載にとどまります。
なおこの非課税取引については、実はもっと大きな別の問題もあるように思われますが、これは最後に触れることに致します。

2.フォワーダーは、非課税事業者か

フォワーダーとは、貨物の利用運送事業者、すなわち荷主から貨物を預り、他の業者の運送手段(船舶、航空、鉄道、貨物自動車等)を利用し、運送を引き受ける事業者を言います。一般には、国際運送を取扱う業者をさします。
ところで、詳細は存じ上げませんが、フォワーダーがこの運送事業者に該当するかに関し、見解が分かれているようです。
A説:ミャンマー商業税法上、非課税取引とされる「商品運送サービス」事業者は、トラック、船舶、航空機等の運送手段を所有している事業者に限られ、フォワーダーはこれらを所有しておらず、非課税措置の適用は受けられない。
B説:フォワーダーは、トラック等の運送手段を所有していないが、荷主から運賃をもらい、トラック、船舶、航空機等の他社の運送手段を利用して運送サービスを提供している。運送契約の当事者となり運送責任を負って事業を営んでいる以上、「商品運送サービス」事業者に該当する。

3.法令の規定について

まず最初に非課税の根拠となる法令がどのような規定となっているかです。最新の連邦税法14条の(4)に商業税の非課税サービスが31項目あり、その6番目です。
ミャンマー語の原文を忠実に翻訳しますと、次の通り。カッコ書きにご注意願います。
●6.「商品運送サービス業」(パイプラインで輸送するもの以外のもので、電車、車、船舶、飛行機、大型トラックで運ぶサービス事業)
A説が「トラック、船舶、航空機等」の所有に限られるとは、どうもこのカッコ書きから来ている可能性が考えられます。
ところでこのカッコ書きですが、石油や天然ガス等を輸送するパイプラインは含まれませんが、それ以外の輸送手段(電車、船舶、航空機、トラック等)による運送を、非課税と規定しております。つまり、運送手段の“所有”は要件としておらず、輸送手段を特定して、通常の貨物を輸送する事業者を想定した非課税規定かと考えられます。
逆に、所有を要件としてしまいますと、大変困ったことになりませんでしょうか。例えば、航空機会社では航空機をオペレーティングリース(所有権はリース会社)により運航している会社が沢山ございますし、車も同様であるからです。
その意味で、フォワーダーはまさに、上記の運送手段を利用して運送事業を営んでおり、法令上の定義からは、これを非課税事業者から除外する理由は見当たらないように考えられます。
万が一、もし輸送手段の所有を非課税要件とするのであれば、パイプラインと同様、上記カッコ書きに運送手段の“所有”を要件とする旨、明記する必要がでてきますが、それは国際運輸の実態からは乖離した取扱いとなるかもしれません。

4.運送業と事業の分業化

それから、「商品運送サービス」ですが、経済取引が活動となり、グローバル化が進みますと、運送事業の中でも分業化が進みます。昔は、運送事業者が自社のトラック等を利用し荷主から預かった貨物を直接運送する形態が多かったかもしれません。しかし様々な種類の貨物が急増し、国際間で移動する時代となりますと、単に運送手段を所有している運送事業者だけでは、迅速かつ的確な国際間の貨物輸送には対応できなくなってきます。
不特定多数の荷主から集めた貨物を集約し、外国の同一の空港又は港あてに貨物まとめたりして空港会社や船会社と運送契約を結ぶ運送事業者が出てきます。スケールメリットを生かして輸送運賃を安く抑えられるからです。一方対荷主との関係では、それぞれの荷主企業に対し請求する運賃合計は運送会社への支払いよりも高くなり、いわゆる混載差益も期待できます。 つまり運送事業とはいっても、所有する運送手段を主な収益源とした事業者のみならず、迅速な運送を確保するためのサービスに着目し、それを収益源とする運送事業者も出てきて、分業化が進んできます。これがフォワーダーの基本業務と考えられますが、こうした業務なくして、今日、国際運送事業は成り立たなくなっているのが現実です。日本などでは、自ら輸送手段を持つ運送事業者を「実運送事業者」といい、この実運送事業者の運送を利用して貨物を運送することを「利用運送事業者」すなわちフォワーダーです。
フォワーダーは運賃をもらい、運送契約を交わし、運送責任を負っている等、運送事業を営む点では、実運送事業者と何ら変わりはありませんので、フォワーダーも「商品運送サービス」業者に該当するのではと考えられます。

5.「商品運送サービス業」と付随業務及び委託業務

ただし実際問題として、フォワーダーは上記以外に、通関業務、集荷配送業務、倉庫業務なども行っているところもあります。その場合、「商品運送サービス業」に不可欠な付随業務とは何か、問題とされる可能性がございますので、個々具体的判定が必要となる場合も出てくるのかと思います。
それから例えば、フォワーダーが、荷主から情報の提供を受け、掲示板やデータベース等にこれを出し、運送業者が成約したらその契約成立の対価を得るといったサービスであれば、仲介業や手数料業務となり、そもそも非課税サービスには含まれません。
フォワーダーが、その引き受けた業務に関し、自ら運送責任を負いながらも、実際の業務は他社に委託するようなケースです。受託者のもとでその業務が実際に遂行されていれば、委託した事業者も基本的には、それと同一の業務を遂行しているとされます。建設工事における元請と下請けの関係がわかりやすい例です。

6.非課税取引と今後の課題

フォワーダーの業務が、非課税取引とされる「商品運送サービス」に含まれるかどうかに関し、限られた情報からでしたが、簡単に見てきました。
ただ、ミャンマー商業税の非課税取引に関しましては、その定義や解釈以外にも、大きな問題があるように思われます。
前月号でも触れましたが、非課税取引には、性質上、単なる非課税取引(仕入控除不可)とゼロ税率取引(仕入控除可能)とがある点です。つまり、あるサービス購入を非課税と規定してしまいますと、その売手事業者は、商業税をもらえなくなる一方で、仕入控除もできなくなるのが原則です。購入者にとってはありがたいのですが、売手にとって、税はもらえない、仕入控除はできないとなると大変です。非課税売上げであっても、それに対応する支払に対し仕入控除を取れるのがゼロ税率取引です。31項目もある非課税取引の中で、どれがゼロ税率取引か明確にしておかないと、納税者と課税当局間で大きな混乱が生じます。
この点、現在の法令を見る限り、どうも輸出以外は仕入控除を認めていないように読める可能性がありますが、輸出以外の30項目のすべてが、ゼロ税率の適用なしといった取扱いになるのでしょうか。
商業税の非課税規定は、常に非課税とした分の“つけ”を関係者(国、売手、買手)の誰かが実質的に負担せざるを得ない仕組みとなっております。仕入控除が取れない(国が負担しない)場合は、税が最終消費者の購入価格に紛れ込み、全く知らぬ間に実質5%超の税負担を余儀なくされるか、さもなければ力の弱い中間事業者が、控除できない商業税を損失処理するのかです。SEZのフリーゾーン法人やODA案件に対する非課税でも、同様の問題が生じるのは明らかです。

ヤンゴン通信―6 散歩の道すがらに見つけた傘をさす仏様

歩道を歩いていたら、たまたま見かけました。きちんとした傘をさして、何となく可愛かったです。ただ、通常はミャンマー人の自宅敷地内におかれ、外に作るのは珍しいのでは。どのような方が設置したのかわかりませんが、1~2週間後にはなくなっておりました。ここをもう少し歩いてゆくとジャンクション・スクエアです。

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