第15回 ミャンマー人の肖像 数々の国際賞に輝く気鋭の写真家 iPhone作品で世界的な評価が下る 数々の国際賞に輝く気鋭の写真家 iPhone作品で世界的な評価が下る まず、掲載した写真をご覧いただきたい。いずれの写真もアングル、色彩、被写体の表情や動きなど、どれをとっても非常にインパクトのある秀逸な作品である。  撮影者のZarni Myo Winさんは、ミャンマーの伝統文化や人間たちの深層を撮り続ける写真家である。

まず、掲載した写真をご覧いただきたい。いずれの写真もアングル、色彩、被写体の表情や動きなど、どれをとっても非常にインパクトのある秀逸な作品である。 撮影者のZarni Myo Winさんは、ミャンマーの伝統文化や人間たちの深層を撮り続ける写真家である。

第15回 ミャンマー人の肖像 数々の国際賞に輝く気鋭の写真家 iPhone作品で世界的な評価が下る 数々の国際賞に輝く気鋭の写真家 iPhone作品で世界的な評価が下る

まず、掲載した写真をご覧いただきたい。いずれの写真もアングル、色彩、被写体の表情や動きなど、どれをとっても非常にインパクトのある秀逸な作品である。
撮影者のZarni Myo Winさんは、ミャンマーの伝統文化や人間たちの深層を撮り続ける写真家である。彼の名は日本人にはあまり知られていないが、ミャンマーではFBのフォロワーが数万人という数字でもわかるように、今やカリスマ的なフォトグラファーと言っていい。
加えて、国内はもとより、欧米でも彼の知名度は高まってきている。2017年から欧米の名だたる賞に輝いているからだ。昨年はプロアマが参加し、60位以内に入選した作品がマレーシアとオーストラリアで展示される「旅行写真家協会賞2017」で総合優勝の快挙を成し遂げ、また「SONY World Photography Awards」で第3位になった。
そして驚くべきことに彼は携帯カメラの分野にも挑戦し、同年、「Mobile Photo Awards」で第1位に、さらに「IPA International Photography Awards 2017」において、ヤンゴンの雨あがりの水たまりを歩いている若者の姿を捉えた写真で、見事第2位を獲得、さらに今年の同賞でも、足を失った若い少年が友人とサッカーをしているのを見ていて、「可能ならばサッカーをしたい」と言った瞬間を捉えた「私は遊びたい」という作品(右)で第3位に輝き、2年連続でiPhone作品で上位入賞を果たしたのである。
この他今年は「IPP International Awards 2018」で第1位に、また「SienaInternational Awards」でも入賞している。ちなみに「IPP Awards」は世界中のiPhoneフォトグラファーの登竜門ともいえる賞で、2007年に賞が創設されて以来、世界で最も尊敬されるiPhoneによるフォトコンテストになっている。そのため入賞作品はニューズウィーク、ワシントンポスト、ウォールストリートジャーナル、バニティフェア、フォーチュン、ガーディアンといった世界の名だたるメディアが支援し、場合によっては掲載されるという。
第11回となる今年は、携帯カメラの性能の向上で世界140カ国以上からiPhoneフォトグラファーが参加。作品数は実に数千にも及んだという。その中での準優勝だから非常に価値が高い。ネットの普及で、こうした彼の実積と個性的な作品は、またたく間に世界に拡散された。そしてついにドイツのフォトギャラリーから契約のオファーが来たのだ。

携帯カメラ以外の作品でも、Zarniさんの創作意欲と感性は素晴らしい。特に構図と色彩感覚の妙には目を見張る。これは天性のものかもしれない。
しかしもっと驚くのは、彼が写真を撮り始めたのは2013年で、まだわずか5年のキャリアしかないということだ。
「1995年から5年間、日本へ行きました。1年間大阪で日本語を学び、1996年から4年間、福井県立大学経済学部に留学しました。その時に、日本人の仕事に対する真剣な姿勢に心が動かされました。美しい日本の自然も強く印象に残っています。」
母親が国費留学生で日本へ行き、その関係で日本にも知り合いができ、その方たちの支援で日本留学が実現したというが、この経験はZarniさんにとって、ミャンマーという母国を改めて見直す良い機会となったに違いない。
「いまはミャンマーの文化、伝統、風俗、慣習、人間たちに非常に興味があります。写真の題材としては申し分ないくらい、この国には希少な素材が眠っています。だからほかの国や地域には全く関心がありません。」
地方の撮影に出ると、3か月くらい現地や被写体に張り付いてベストショットの機会をうかがうことが多いという。ことに時間が許す限り生活を共にして撮り続けているミャンマーの旅芸人「ザッタピン」の生きざまは、彼のライフワークともいえるテーマである。
現在、彼はFBを通じて年に数回「フォト教室」を開催している。今年はマンダレーで180人、ヤンゴンでは250人もの受講者があった。むろん受講は無料で、写真家を目指すこの国の若者たちに撮影のイロハからテクニックまで教えている。
「若い人たちには高級なカメラや機材はいらない。写真は心で撮るものだと、教えています。また、山などの自然の風景景色を撮る時にも、そのままシャッターを押すのではなく、自分の心に浮かんだ感性や気持ち込めて撮りなさいとアドバイスしています。」
彼の夢は日本で個展を開くことだという。「今はネットがありますから、私のFB(Zarni Myo Win)を観れば、これまでの作品や、現在の活動などがわかりますよ。」
わずか5年で、しかも独学でミャンマー有数の写真家になった彼のあくなき芸術家魂は、その作品からもひしひしと伝わってくる。今後の活動が楽しみである。

Zarni Myo Win プロフィール
出身地:ピン・ウールイン
年齢:40歳
学歴:ヤンゴンの ミャンマーダゴン第1高校
1995年~1996年 大阪で日本語学校に学ぶ
1996~2000年 福井県立大学経済学部留学卒業
2000年帰国。2013年から写真家に

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