岩政×能登の年末特別対談「サッカー選手は選択肢を?そして、二人の理想郷と日本代表との共通点」

十二月某日。

関東一部リーグ、東京ユナイテッドFCで共に戦った二人を招き、特別対談を開催させて頂いた。

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その二人とは、今季終了後に現役引退を表明し、既にサッカー解説者などでも活躍中の岩政大樹。そして、Qolyでもすっかりお馴染みの「さすらいのフットボーラー」こと能登正人だ。

「二人でここまで深く話したことはなかった」と語るほど盛り上がった対談はあっという間に数時間が経過。これからその模様を数編に分けてお届けするので、是非ファンならずともお楽しみ頂きたい。

含蓄のある話ばかりが飛び出した熱いトークには、サッカー好きはもちろんのこと、サッカーをしている子供を抱える親、現役のサッカープレーヤー。そして、サッカーとは無縁の方の胸にも突き刺さる魅力が詰まっている。

インタビュー・文:編集部T

写真協力:東京ユナイテッドFC(公式HP

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Qoly(以下、━━太字)セカンドキャリアの話が出ました。能登選手のように現役からセカンドキャリアでも目立つ選手はまだまだ日本には数少ないと思いますが、岩政選手はどのような印象をお持ちですか?

岩政大樹(以下、岩政)
何というか、これも時代かなと思います。僕の場合、業種自体は変わりませんが、考え方自体はマサと近いですね。

当然、分散することによって一つのことに集中しにくいという面はあると思いますが、どちらがどれぐらい大事かを理解した上で行動すればいいと思うんです。

逆に「僕は引退するまでサッカー選手一筋」というのでもいい。これが正解っていうのがあるわけではないですからね。

ただ、それらをきちんと理解した上で判断が出来ていれば、問題ないと思うんですけど、「一筋でやる」と決めたことに理由がないのであれば、それは勿体ないことだと思います。

━━とは言え、サッカー選手となるとどうしても現役中は「サッカーの道一本」になりがちな印象です。

岩政
「一つのことだけをやる」と結論付けている選手って、意外と他のことをすることを考えずにそのように至ったケースが多いように感じるんです。でもそうじゃなくて、ちゃんと色々な選択肢をテーブルの上に置いた状態で考える必要があるんじゃないでしょうか。

前にナイキのヤマタクさん(元日本代表MF山田卓也。東京ヴェルディを始めとした国内外のクラブを渡り歩き、現役中から様々な活動を行う。現在は株式会社ナイキジャパンでスポーツマーケティングに携わっている)と二人で話す機会もあったんですが、この社会人リーグである程度のお金がもらえれば、時間はたくさんできるんですよね。

その中で色々な人と出会っていけば、何か広がるものがそこにはあるし、それが徐々に大きくなれば、選手にとってもプラスじゃないかなと。

これまではプロサッカー選手って現役中はそのことだけを考えて、その後のことは引退してから考えるというケースが多かったですが、もうそんな時代じゃないと思います。

━━どこか現代社会の傾向にも通じる話のように聞こえますね。

岩政
みんな何かしらの仕事を始めて、大体30歳そこらで「次は何をしようか」と転職の準備をしたりしますよね。サッカー選手もそれと同じようなことで、自然な流れと言えるんじゃないでしょうか。

━━ただ、書籍『PITCH LEVEL』の中でも書かれていましたが、元々は岩政選手も「サッカー選手一本派」だったようですね。

岩政
そうですね。それが岡山にいた頃から徐々に変わっていきました。引退ということを考える中で、「既に今もけっこう時間があるな」と思うようになったんです。

それで、具体的に「何かやったぞ」というものを残したいなと思って…。ただ、やはり、やれることは限られていて、その一つが書くことでした。

あ、でも…。

━━━でも…?

岩政
料理教室とかも行きましたよ(笑)

能登
その料理教室の話は僕も初耳です(笑)

岩政
引退した時に料理ができるようになっているほうがいいなーと考えたんです。料理はちゃんと自分のものとして残るものであり、子供が大きくなったらお弁当とかも作れますからね。

その他にも英語とかも勉強しにいきました。きっかけが欲しいなと考えるよりも、まずは自分の足を動かそうと。なので、岡山に行ってからの二年間はけっこう色々とやりましたよ。

そして、書き溜めていたコラムが書籍の話となり、東京に来てからは解説業も始めることができました。

これも僕の中での一つの流れだったなと思っています。

━━「まずは自分の足を動かそう」という考え方は能登選手にも通じる点があるのでは?

能登
自分の場合は、「指輪を作ってみました!」とマネージャーさんに見せたら、「マサ、これ何で売らないの?」という反応が返ってきたところがきっかけになりました。自分が欲しかったんで作ってみただけだったんですけどね(笑)

今、実家はピザ屋と和食屋をやっていますが、元々、父親はヴェネチアングラスや陶器を作る人間で、母親も絵を描いていた。

なので、そういう環境で育ったからこそ、ゼロから物を作るということがそもそも好きだったのかもしれません。

後は「何でもやってみよう」というのが僕の基本スタンスで、一回ダメでも二回ダメでも続けていればいつかものになるだろうという考えを持っていたことも大きい気がしています。

━━「続けていく」ということでは、岩政選手もこれから続けていかなくてはならないことをたくさんお持ちかと思います。その中で、現役選手から離れることで出来た時間をどのように使っていくかの計画などはあるのでしょうか?巷では「このまま指導者を目指していくのではないか」という声もあるようですが…。

岩政
指導という道に最終的に行くかどうか別として、サッカーをもっと理解しないといけない、言葉で表現できるようにならなければいけないという風には考えています。

その作業を繰り返していれば、指導者だろうが、解説者だろうが、書き手だろうが、どこにでもいけるだろうと思っているんです。それらに大きな違いはないと思っているので。

ただ、指導者となると、人との付き合い方というかマネージメント力が問われてくるようになるので、そこではまた別の勉強がいるかもしれません。

でも、このまま一年、二年と続けるよりも、空いた時間で様々なことに挑戦をしたり、色々な人に会いに行ったりしているほうが有意義だなと感じていますね。

それは、ここはマサとも似ている部分ではあるんですが、そこまで遠い先のことを考えて動いていないからかもしれませんが。

━━長期的にではなく短期中期的に考えているわけですね。

岩政
世の中には「夢を持て」という風潮がありますが、僕らのようなおじさんたちの多くは夢なんかを持っているわけではなくて、今直面していることをどうするかの繰り返しです。それで、問題を解決したり、様々な人に会う中で新しいアイデアが出てきたりするんですよね。

そして、怖がらずに何事にも挑戦していっても、決してそれで困ることはないと思うんです。自分に「これはダメだな」と判断できるところさえあれば。

今やっていることが5年後にどこに繋がっているかはわかりませんが、それはそれで良くて、「面白そうだからそこに行ってみよう」という感覚を大事にして生きていればいいんじゃないかと思っています。

能登
僕はそこを「直感」と表現していますね。人と会う時に「直感で来ました」という言い回しをよく使ってます(笑)

岩政
自分の場合は「なんとなく」かな(笑)

能登
「直感」と「なんとなく」…似てますね(笑)

━━それらのフレーズを使った上で聞いてみたいことがあります。一人のサッカー選手として、直感的になんとなく「いいなぁ」と思えるチームの在り方やサッカーのスタイルなどはありますか?

岩政
外から見た時に選手の個性がピッチの中で出ているサッカーですかね。

選手の心理面から言えば、自分がやろうとしていることがピッチで表現しやすい環境とも表現できるかもしれません。

それぞれが自分のやりたいプレーをやっているけど、実は全体で見るとまとまっているというチームができれば、面白いサッカーができるなと思っています。

能登
僕も「自分が活きて周りを活かして」というサッカーが好きなので、意味は大樹さんと一緒ですかね。

そういう環境で練習が続いて、試合が続いて、気付いたら良い集団になっているというパターンが理想です。

岩政
まさにその通りで、「最終的にチームがまとまる」という感覚が大事。一人一人が大きくなれば、チーム自体も大きくなっていますからね。

でも、日本の場合、特にカテゴリーが下になるとそれがより顕著な印象ですが、先にフレームを決めてしまいがちなんですよ。

そうなると、その枠の中でしか選手はプレーできないわけで、選手が大きくなっても窮屈になり、チーム全体は大きくならない。だから、この順番がすごい大切だと思います。

━━「固定化させないようにする」という意味ですね。

岩政
そうです。

「理想のサッカーはなんだ?」という話になると、「ポゼッションサッカー」のような言葉が回答例でよく出てきますが、そういう形から入ってしまうと、日本人は固定化されやすいんですよね。

だから、日本のサッカーの場合は、選手が様々な絵を描きやすい環境を作り、そこから選ばすようなアプローチじゃないと「たぶん、ダメなのかな…」と今のところは感じていますね。

━━お二人も同じような考えをお持ちのようなので、「選手が絵を描きやすい環境を」というテーマを少し広げてみようかと思います。この環境は、現在の日本代表に共通する部分があるように感じますが、森保一監督体制となった今の日本代表のことはどのように見ていますか?

岩政
そうですね。今の日本代表はまさにその形になってきていると僕も思います。

選手に落とし込まないといけないところと選手に任せるところの線引きがある中で、トップレベルの選手たちはそこがわかるようになったんじゃないかなと。

立ち位置など選手の判断に委ねる前のところだけを整理して、監督はちょっと引いた立場で見てあげることが大事だと思いますが、日本もようやくそのレベルに到達してきたんじゃないかなという印象です。

ただ、日本全体で見るとまだまだそうではない。これがちゃんと浸透していけば、全体のベースが上がり、ポジショニングやプレー原則のミスというのは減ってくるんじゃないでしょうか。

━━そこはこれからの日本サッカー界の課題の一つのように感じます。

岩政
なので、そういう原理原則を指導者がきっちり落とし込めるような共通認識を持たせていくことが重要かなと。

ここを抑えれれば、選手の個性で変わってくるよねという話にも移れると思うんです。

僕もこの感覚については色々なところで話していきたいなと考えていますが、ようやく森保監督のような方が出てこられて、そのような流れを作りやすくなったなと感じていますね。

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