ベテランパワーと鉄壁の救援陣でAクラス入り 2008年の中日を振り返ると…

中日鉄壁の救援陣を支えた浅尾拓也(左)と岩瀬仁紀【写真:荒川祐史】

セ強豪の一角を占めた2008年、アライバコンビは全盛期

 10年ひと昔という。10年前の野球界はどんな様子だったのか。2008年の野球界を数字で追いかけよう。この時期、中日はセ・リーグでは強豪チームの一角を占めていた。

2008年 中日ドラゴンズ 71勝68敗5分 勝率.511

 この年のセ・リーグは、トップを走る阪神を巨人が追いかける図式。3位以下は大きく引き離される中、中日は7月、8月に負け越し。広島と3位争いを繰り広げたが、広島を2差で振り切って、首位からは12ゲーム差ながらクライマックスシリーズ(CS)進出を果たした。中日は2004年の落合博満監督の就任以降、5期で優勝2回、2位2回、3位1回。すべてAクラスの安定感だった。

 CS第1ステージでは、2位の阪神を2勝1敗で下したが、第2ステージでは巨人に1勝3敗1分(巨人のアドバンテージ1を含む)で敗退した。

○打線 左端の数字は打順、打率の横の()は順位

1二・荒木雅博(31歳)130試538打131安4本28点32盗 率.243(33)
2遊・井端弘和(33歳)106試408打113安5本23点8盗 率.277(21)
3外・李炳圭(34歳)105試418打106安16本65点1盗 率.254(31)
4一・ウッズ(39歳)140試490打135安35本77点0盗 率.276(22)
5外・和田一浩(36歳)136試520打157安16本74点1盗 率.302(15)
6三・中村紀洋(35歳)140試493打135安24本72点0盗 率.274(24)
7外・森野将彦(30歳)96試358打115安19本59点1盗 率.321(5)
8捕・谷繁元信(38歳)113試329打77安2本27点0盗 率.234
遊・デラロサ(31歳)93試214打52安7本22点0盗 率.243
外・小池正晃(28歳)59試141打32安4本15点1盗 率.227
外・井上一樹(37歳)74試141打41安1本10点0盗 率.291
外・平田良介(20歳)59試97打26安1本9点0盗 率.268
代・立浪和義(39歳)86試73打15安1本10点0盗 率.205

 NPB史上でも屈指の二遊間コンビ、アライバ(荒木、井端)は揃ってゴールデングラブを受賞。打っても1、2番コンビで活躍した。KBO(韓国プロ野球)の強打者、李炳圭は、2年目のこの年は16本塁打とまずまずの働き。ウッズ、和田、中村と続く打線も強力だった。

 しかし、レギュラー野手8人は全員30代、30代後半も4人と高齢化が進んでいた。一方で、大阪桐蔭から入団して2年目の平田が頭角を現した。

2桁勝利は山本昌と吉見だけ、最強守護神・岩瀬を中心に勝利の方程式を形成

○投手陣 防御率の横の()は順位

先・山本昌(43歳)23登11勝7敗0SV0HD 133.2回 防御率3.16
先・小笠原孝(32歳)26登8勝11敗0SV1HD 132回 防御率4.70
先・中田賢一(26歳)23登7勝9敗0SV0HD 129.2回 防御率4.65
先・川上憲伸(33歳)20登9勝5敗0SV1HD 117.1回 防御率2.30
先・川井進(28歳)14登1勝5敗0SV0HD 56.2回 防御率3.97
先・朝倉健太(27歳)12登3勝4敗0SV2HD 56.1回 防御率3.36
兼・チェン(23歳)39登7勝6敗0SV12HD 114.2回 防御率2.90
兼・吉見一起(24歳)35登10勝3敗0SV10HD 114.1回 防御率3.23
中・高橋聡文(25歳)54登2勝1敗1SV15HD 54回 防御率2.33
中・浅尾拓也(24歳)44登3勝1敗1SV12HD 50.1回 防御率1.79
中・清水昭信(25歳)15登2勝2敗0SV2HD 44回 防御率2.45
中・長峰昌司(24歳)33登2勝1敗0SV3HD 43回 防御率5.65
中・小林正人(28歳)46登0勝2敗1SV10HD 28.2回 防御率4.40
抑・岩瀬仁紀(34歳)51登3勝3敗36SV5HD 49回 防御率2.94

※兼は先発・救援を兼ねた投手

 規定投球回数に達した投手はなし。先発投手に頼るのではなく、継投策で勝ちを拾う戦い方だった。43歳の山本昌は2完投を含む11勝、吉見は10勝を挙げたが、他に2桁勝利投手はいなかった。

 先発陣は頼りなかったが、高橋聡、浅尾と一級品のセットアッパーが揃い、最後を最強のクローザー、岩瀬が締める「勝利の方程式」ができていた。

現役野手は平田だけ、ドラフト組も現役続行はわずか2人

 この顔ぶれの中で来季も現役を続けるのは、野手では平田良介のみ。荒木雅博は2017年に2000本安打を記録し、今オフに引退を表明した。

 投手陣では、吉見一起が中日で現役。中田賢一はソフトバンク、高橋聡文は阪神に移籍してマウンドに上がり続けている。また、チェンはMLBに移籍し、今季はマーリンズで6勝を挙げた。セットアッパー、クローザーとして一世を風靡した浅尾拓也、岩瀬仁紀は、今年、揃って引退を表明した。

○ドラフト会議

1位 野本圭(外野手)日本通運
2位 伊藤準規(投手)岐阜城北高
3位 岩崎恭平(内野手)東海大学
4位 高島祥平(投手)帝京高
5位 岩田慎司(投手)明治大学
6位 小熊凌祐(投手)近江高
7位 井藤真吾(外野手)中京大学附属中京高
育成
1位 加藤聡(外野手)大阪産業大学
2位 小林高也(外野手)東京弥生クラブ

 即戦力外野手と前評判の高かった日本通運の野本を、楽天とともに1位指名。くじで指名権を得た。しかし、野本はレギュラーの座を得ることなく、今季限りで引退を表明。現役は2位の伊藤と6位の小熊だけとなった。伊藤は今季中継ぎとして11試合に投げ、小熊は今季3勝を挙げた。

 中日はこの後、2012年までAクラスをキープし、CSに進出し続けたが、世代交代がうまくいかず。2013年以降はBクラスに低迷している。

 実績あるベテランに頼り続け、先行投資が十分にできなかったことが、現在の状況につながったと言えるだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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