【高校野球】「夏は西だけでは勝てない」―創志学園の“2番手”、146キロ右腕の決意と可能性

最速146キロを誇る創志学園の草加勝【写真:沢井史】

中学時代から“隠れた逸材”の草加勝、入学当初は「複雑な気持ち」も…

 181センチ、72キロと細身ながらストレートの最速は146キロ。創志学園ではエース西純矢がいるため、“2番手”という立場の草加勝投手(2年)は中学3年時に138キロをマークした“隠れた逸材”でもある。速球以外に50メートルを5秒8で走る俊足も草加の大きな魅力だ。打撃の良さもあり、外野手としてスタメン出場する試合も多かったが、やはり見せたいのは“本業”での姿だろう。

 小学校、中学校では外野手。中学2年から本格的にピッチャーを始めたが、コントロールは決して良い方ではなかった。そのため帰宅後は3歳上の兄が構えたミットに集中して投げ込む練習を重ねてきた。兄も創志学園に進んだため、その背中を追って創志学園の門をくぐったが、入学直後の6月にヒジを痛めた。

 そんな中、同級生ですでに頭角を現していたのが西だった。兄から創志学園の練習は厳しいと言われ覚悟してきたものの「練習が厳しいうえにそんな同級生がいるのは複雑な気持ちでした」と当時の心境を明かす。それでも西のいいところを見て自分のプラスにしていこうとポジティブに考えた。

 1年生だった昨年12月にようやくヒジが完治。年が明けてピッチングを開始した。練習試合が解禁になる3月には実戦登板を果たした。ストレートとカーブのコンビネーションが持ち味。場数を踏むごとにマウンドさばきにも自信がつき、2年春に初めてベンチ入りした。ストレートの伸びが調子のバロメーター。その伸びがどんどん増していき、今春の県大会で146キロを叩き出した。

「高めのストレートで三振が取りやすいので、ストレートで空振りが取れた時は調子がいいんです。この頃からストレートにはだんだん自信を持てるようになってきました」

「夏は西だけでは勝てないので、西を支える存在になれたらいい」

 夏の甲子園で快投を見せた西の存在はさらに大きくなった。

「夏の甲子園の西はただすごいなって。西は負けず嫌いな性格だから、どうしてもストレートで押そうとしたり、自分が何とかしないと気が済まないとムキになっていた場面もあったけれど、責任感が強いから。自分は西に比べると経験不足。まだまだやることが多いです」

 西が主戦となり、位置づけは“2番手扱い”。でも、下は向くことはない。

「自分は体がまだできていないです。自分が先発して柱になるかは、これからの取り組み次第です。夏は西だけでは勝てないので、西を支える存在になれたらいいと思います。それに自分は今の時点では監督さんに信頼されていないので、これからどうやって信頼してもらえるかだと思います。今はとにかく走って体を作れと言われています。春の大会で先発して最後まで投げて、抑えられるようになりたいですね」

 来春には150キロを出したいという目標がある。そのために体作りに余念がない。全体練習後はグラウンドから学校近くのトレーニングルームに移動し、毎日トレーニング器具を握りしめる。野球以外ならバスケットボールも得意で「ジャンプする競技は好きです」と笑みをこぼす。体力測定の“立ち三段跳び”ではチームで1位となる820センチという数字を叩き出した。「筋力はチームで西が断トツなんで勝てないですけれど」と苦笑するが、体のバネの強さも草加の大きな武器でもある。

 体作りのテーマは“壊れない体を作る”ことだ。「自分は足もあるので体のバネを使うのなら、もう少し大きくなるくらいがいいのかな」と本音を漏らすが、草加の成長は西にとってはこの上ない大きな味方になる。それどころか“2本柱”として来夏の高校野球を賑わす存在になるかもしれない。“最強の2番手投手”という表現には語弊があるかもしれないが、今、その道を草加はぐんぐんと邁進している。(沢井史 / Fumi Sawai)

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