大無間山|難路を越えた先の達成感!憧れの南アルプス深南部へ 日本二百名山の中でも難関の山と言われている大無間山。アクセスも困難な南アルプス深南部にあり、さらに登山道の崩落が進んでいるため、いつ登れなくなるかわからないといわれている、上級者向けの名峰です。今回はそんな憧れの山、大無間山のメインルート情報をはじめ、崩落地点などの危険情報、さらにアクセス・駐車場情報などを紹介します。いざ、憧れの大無間山へ!

大無間山(だいむげんざん・だいむげんやま)とは?

  • 標高: 2,329m
  • 山頂所在地: 静岡県静岡市葵区榛原郡川根本町市
  • 最高気温(6月-8月): 17.3℃
  • 最低気温(6月-8月): 4.7℃

参考:ヤマレコ
日本2位の北岳をはじめ、3,000mを超える山を数多く有する人気エリア「南アルプス」。この山域は「三伏峠」を境に、さらに南北に分かれており、三伏峠より北側を「南アルプス北部」、南側の光岳までが「南アルプス南部」と呼ばれています。
今回紹介する「大無間山」は、そんな光岳より更に南、登山者から「南アルプス深南部」と呼ばれる山域に位置する名峰です。崩落が進んでいるため、いつ登れなくなるか分からない二百名山でもあります。

大無間山は”上級者向け”の山!

大無間山は上級者向けの山として知られています。静岡県が作成している山のグレーディング表でのレベルは、体力度6、技術的難易度E。崩壊地やロープが張られた不安定な場所があるため、登山には充分な注意が必要です。

体力度6:2~3泊以上が適当
技術的難易度:緊張を強いられる厳しい岩稜の登下降が続き、転落・滑落の危険箇所が連続する。深い藪漕ぎを必要とする箇所が連続する場合がある。

静岡県 山のグレーディングで難易度を確認

田代温泉からのコースは崩落地あり

田代温泉から出発して山頂を目指すコースでは、小無間山の手前に崩壊地が現れます。ロープも張られていますが、大無間山を目指す登山者の間では、危険箇所として知られている難所です。このような登山道のため、山と高原地図では破線ルートとして紹介されています。

天気の悪い時は足元に注意!

大無間山は難路も多いため、事前の天気チェックは必ず行ってください。
てんきとくらす(大無間山の週間天気)

大無間山は難路も多く難しい場所も!地図だけじゃなくGPSアプリも併用しよう

大無間山はほぼ全部のルートが上級者向け。地図はもちろんですが、圏外や機内モードでも使えるGPSアプリも一緒に準備しましょう。

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山頂は展望ないけど…魅力豊富な大無間山

危険な難所がある大無間山の山頂は、実は樹木に覆われているため眺望が望めましせん。しかし、コース上には見所が満載。ここでは、数ある絶景スポットを紹介します。

登山道から見える数々の絶景

(P1辺りから見る小無間山)

山と高原地図ではP1と書かれている、通称「鋸歯」と呼ばれる地点からは、小無間山を確認することができます。その頂の手前で白く見える、山肌が削り取られた斜面が崩壊地。自然の脅威の中を肌で感じる絶景スポットです。

(崩壊地を過ぎたあたりから見える深南部の眺望)
(崩落地を過ぎたあたりから見える富士山の眺望)

崩壊地を過ぎると視界が開け、そこには、さらなる絶景が待っています。右手方向に振り返ると、飛び込んでくるのは、均整な姿でそびえる霊峰「富士山」。そこから進行方向に視線を移すと「深南部」と呼ばれる山域が見えてきます。連なるピークから山深さが伺えますね。

(山頂直下からの眺望)

山頂直下からも、雄大な景色を眺めることができます。南アルプスの最南端に位置する光岳をはじめ、スカイラインを右手方向に辿るとイザルヶ岳、易老岳、仁田岳。逆方向の左手側に視線を移すと、顕著な双耳峰で目立つ池口岳、更にその左には鶏冠山が続きます。

アスレチック感満載の登山道

(鋸歯付近の急登)

登山口から出発して、鋸歯付近にさしかかると立ち塞がるのがヤセ尾根の急登です。恐怖を感じる難所ではありますが、木々に覆われているため、木漏れ日が美しいポイントでもあります。

(崩落地)

崩壊地の通過は、両端が切れ落ちたナイフリッジ。しかも、足元が崩れる脆い地質のため、充分な注意が必要です。ロープも設置されていますが、足を踏み外さないように慎重に進みましょう。

【メインコース】田代温泉〜小無間山〜大無間山

大無間山への登山ルートは、寸又峡や大根沢山からの縦走路など、さまざまなコースが考えられますが、いずれも難所が多いため、今回は田代温泉から出発するメインルートを紹介します。こちらも崩壊地を通過する必要があるため上級者向けであることは変わりありません。重々注意して登りましょう。

  • 距離(登山口~P1、小無間山~大無間山): 約19km
  • コースタイム: 14時間25分
  • 日程: 1泊2日
  • 難易度: ★★★★☆

参考:ヤマプラ
田代温泉(70分)→雷段(65分)→小ピーク(80分)→P4(75分)→P1(70分)→P4(50分)→小ピーク(35分)→雷段(40分)→田代温泉
小無間山(50分)→関ノ沢ノ頭(中無間山)(80分)→大無間山(70分)→関ノ沢ノ頭(中無間山)(60分)→小無間山
※鋸歯~小無間山に関しては、山と高原地図では通行不可になっているため、計測が出来ません。ヤマプラでの複数の方の山行記録を基に、片道約1km・1時間にて計算しております。

登山の出発地は諏訪神社の近くにあります。設置された道標に従いコンクリートの階段を上がると、そこが登山口。登山届の記帳所が目印です。準備を済ませてから針葉樹の登山道を進むと、数分で地図上の送電線と鉄塔が見えてきます。

送電線を背後に見送ると、斜面が急になります。一息で登り、傾斜が緩むと、そこが雷段です。青いテープが巻かれた木々が目印です。一休みしてから再び急斜面を歩き続けると、1,402mの小ピークを越えて、小無間小屋に到着します。

1日目はここに泊まりましょう。小無間小屋の目の前は平らな広場。青色に目立つ小屋の中には蓋をされた囲炉裏があり、その周りで横になることも可能です。使用後はゴミなどを残さず、来た時の状態に戻しましょう。

2日目のスタートです。この先が難所のポイント。気を引き締めて出発しましょう。まずはP1、通称″鋸歯”と呼ばれるピークを目指します。ヤセ尾根の登山道で、特に左手側の斜面が切れ落ちているため、転倒などには重々注意しましょう。

P1を過ぎて降り坂になると、木々の隙間から、えぐられた白い斜面が確認できます。あれが崩壊地といわれるコース上最大の難所です。現在進行形で崩壊が進む尾根には浮石もあり、足場は非常に不安定。ロープを頼りに、細心の注意で通過します。

崩壊地をやっとの思いで越えた先が小無間山。そこから降り坂になり、登り返したピークが唐松谷ノ頭です。左手の谷に吸い込まれるように崩れるザレ場が″唐松薙”。目の前には目標となる大無間山の山頂が確認できます。

これまでの難所からうって変わり、中無間山までの登山道は、心が休まる緩い尾根道となります。2,109mのピークは木々に覆われており、眺望はありません。ここでは北へ伸びる尾根へ踏み跡がついているので、迷い込まないように注意しましょう。正しい登山道は南西へ向きを変えます。

中無間山を過ぎると、ここでも絶景が待っています。右手に振り替えれば霊峰富士山の雄姿。目の前を向けば光岳。その横に双耳峰が目印となる池口岳が遠くに確認できますね。ここまで来れば大無間山は間もなくです。

中無間山から大無間山までは再び登り坂になります。息が切れるポイントですが、辛い斜面もこれで最後。気合を入れて進めば、中無間山から約1時間20分で目標の山頂に到着です。展望はありませんが、看板との記念撮影は忘れずに!

大無間山周辺の小屋・宿泊情報

登山コースを確認したら、次は周辺の小屋や宿泊情報を見ていきましょう。登山道上には市営の無人小屋。登山口の周辺ではキャンプ場や民宿が利用できます。登山計画を立てる際の参考にしてください。

静岡市営 小無間小屋

1,796mのピークに建つ小屋です。営業小屋ではなく、あくまでも避難小屋に当たるため、人はいません。収容人数は約10名。泊まることは可能ですが、売店、水場、トイレもないので注意しましょう。

住所:静岡県静岡市葵区井川
料金:無料

南アルプス井川オートキャンプ場

こちらの施設は、田代温泉のすぐ近くで水をたたえる井川湖の湖畔で利用できるキャンプ場です。宿泊サイトの他に、温泉施設やコインランドリーなどの設備が充実しています。下山後に汗を流すのもおススメです。

住所:静岡県静岡市葵区田代449-2
電話:054-260-2322
営業時間:4月の第4土曜日から5月末まで。7月から10月末まで。(チェックイン13:00、チェックアウト11:00)
定休日:なし(6月及び11月から4月下旬までは休業)
料金:大人300円、サイト使用料:1区画3,500円
日帰り入浴:300円

民宿ふるさと

田代温泉に佇む静かな民宿。猟師でもある主人が営んでいるため、夕食では鹿肉や猪肉料理などを楽しむことができます。温泉設備もあり、2食付きで1万円以下はとてもリーズナブル。
住所:静岡県静岡市葵区田代678
電話:054‐260-2858
料金(1泊2食付き/1名あたり):7170円(2名利用時)、7710円(1名利用時)
日帰り入浴:500円

大無間山までのアクセス情報

最後に、登山口までのアクセス情報を紹介します。バスを利用する方法も記載しますが、こちらは井川地区に住む方々が生活で利用するバスであること、また静岡駅発着の便は1日2本しかないため、車でのアクセスをおすすめします。

車の場合

東名高速静岡IC→てじゃまんくの里駐車場※

電車・バスの場合

JR静岡駅→しずてつジャストライン→横沢バス停

1.井川地区住民の乗車を優先します。
2.定員超過となった場合には、ご乗車をお断りします。
3.ご乗車の予約はお受けいたしません。

井川地区自主運行バス 時刻表

駐車場情報

大無間山登山口の付近に、登山者の利用を目的とした駐車場は、現状整備されておりません。

てしゃまんくの里の駐車場はトイレ利用者の為に作られており、登山者用の駐車場ではありません。過去にはトラブルもあったため、民宿やキャンプ場を利用するなどし、事前に直接交渉するようお願いします。乗合でのタクシー利用もおすすめです。

崩壊が進む大無間山。道が無くなる前に登りましょう!

大無間山は、南アルプスの深南部にひっそりと佇む、静かな二百名山です。山頂からの眺望はありませんが、山頂へ至る道中で視界に映る広大な山々の連なりからは、自然の奥深さを感じることができます。そして、小無間山手前の崩壊地は、危険な難所でもありますが、大地の息づかいを感じることができる絶景ポイントでもあるのです。この崩壊地が完全に崩れてしまえば、登頂はますます困難になってしまいます。今この瞬間を逃さずに、後悔する前に計画を立てて、ピークハントにチャレンジしましょう!

【登山時の注意点】
・登山にはしっかりとした装備と充分なトレーニングをしたうえで入山して下さい。(足首まである登山靴、厚手の靴下、雨具上下、防寒具、ヘッドランプ、帽子、ザック、速乾性の衣類、食料、水など。)
・登山路も複数あり分岐も多くあるので地図・コンパスも必携。
・もしものためにも登山届と山岳保険を忘れずに!
・紹介したコースは、登山経験や体力、天候などによって難易度が変わります。あくまでも参考とし、ご自身の体力に合わせた無理のない計画を立てて登山を楽しんで下さい。

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