【英国ドラマ通信】Vol.6 「シャーロック」製作陣が放つ最新ドラマ「ドラキュラ」について今分かっている五つの事実

【英国ドラマ通信】Vol.6

「シャーロック」製作陣が放つ最新ドラマ「ドラキュラ」について今分かっている五つの事実

こんにちは、川合亮平です。今回は、僕が個人的に大きな期待を抱く作品について紹介します。BBC「SHERLOCK/シャーロック」の制作陣が放つ「ドラキュラ」。企画・脚本を手がけるのは、スティーヴン・モファット氏とマーク・ゲイティス氏、そして製作総指揮がモファット氏、ゲイティス氏、スー・ヴァーチュー氏、ということで、もう“まんま”「シャーロック」組の作品です。

そんな「シャーロック」組のお三方に僕は何度か直接インタビューさせていただいたことがあるんですが、とにかくその天才性と無邪気さが強く印象に残っています。「あぁ、天才ってこういう人たちのことをいうんだ」と。そういう意味で、「ドラキュラ」への期待は高まるばかりなのです。「ドラキュラ」の内容に関しては、今のところ具体的なことはほとんど明かされておらず謎に包まれた状態なのですが、リサーチし、分かっている事実を集めてみました!

【事実その1:そもそもドラキュラって何?…というか誰?】

ドラキュラというのは小説に登場する架空の個人の名前で、彼は不死身のヴァンパイア。ルーマニアのトランシルヴァニア出身で、500歳くらい(という、うわさ)です。原作小説のタイトルは「吸血鬼ドラキュラ(原題:Dracula)」。イギリス人作家のブラム・ストーカーによって書かれたゴシックホラー小説で、1897年にイギリスで出版されました。以来、これまで古今東西で数多くの小説や映画・ドラマにドラキュラは登場しているのですが、ゲイティス氏の一番のお気に入りドラキュラは、1958年製作のクリストファー・リー主演映画「吸血鬼ドラキュラ」とのことです。

ちなみに、「ドラキュラ」と同じく19世紀イギリスで刊行され、今でも読み継がれている怪奇小説「ジキル博士とハイド氏」。この古典小説の続編という形式をとったBBCドラマ「ジキル」(2007)の脚本を担当したのがモファット氏なんですよ。今回の新作「ドラキュラ」の雰囲気や世界観を予想する上で、上記2作品はキーポイントとなるのではないでしょうか。

【事実その2:いわゆる一つの“現代版”「ドラキュラ」?】

英国古典小説であるコナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」の現代版として制作されたのが「シャーロック」ですが、じゃあ今回の作品も現代版「ドラキュラ」になるんでしょうか?これに関しては、ゲイティス氏がインタビューで否定しています。少なくとも時代設定としては原作に忠実に描かれるようですよ。公式発表のPRフレーズをご紹介します。

「1897年トランシルヴァニア。吸血伯爵がヴィクトリア朝ロンドンで事件を起こそうと計画中。注意せよ、そのヴァンパイアは間もなく現れる」

短い文ですが、雰囲気満点ですよね。悪者のなかにあるヒーロー性を描くことがこの最新ドラマの軸になるようです。

【事実その3:マーク・ゲイティス氏は今回も出演するの?】

「シャーロック」でのマイクロフト役をはじめ、役者としても大活躍中のゲイティス氏。今回の「ドラキュラ」でも制作者兼役者としてわれわれを楽しませてくれるのでしょうか? インタビューによると「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。でも演じるとするなら、断然R・M・レンフィールド役がいいなぁ。大好きなキャラクターだから」とのことです。個人的には役者としてのゲイティス氏も大好きなので、「ドラキュラ」でもその演技をぜひ、見たいところです。

【事実その4:主演のドラキュラ伯爵は誰が演じるの?】

キャストに関しては、主演のみが先日発表されました。デンマーク人役者、クレス・バング氏です。生年月日は1967年4月28日。これまでは主に舞台役者として自国デンマークで活躍されており、5カ国語を操り、シンガーソングライター、ピアニストとしての顔も持っているとのこと。17年カンヌ映画祭で最高賞であるパルム・ドールを受賞した映画「ザ・スクエア 思いやりの聖域」で主役の美術館キュレーター役を演じたことがきっかけで、世界的にその名が知られるようになったようです。日本では19年1月11日公開される「蜘蛛の巣を払う女」にも出演されていますよ。

モファット氏とゲイティス氏は「ザ・スクエア」のトレーラーを見て一瞬でドラキュラ役はバング氏しかいないと確信したそうです。「シャーロック」のキャスティングの際のカンバーバッチ氏もそうだったらしいのですが、“候補役者1人”状態のキャスティングです。オーディションとかじゃなくて、もう鼻から一点狙い撃ち。そのあたりもモファット&ゲイティス作品らしいと思いますが、バング氏が出演OKでよかったですよね。OKじゃなかったらこの企画が実現しなかったことになりますもんねぇ。

【事実その5:日本でも見られるの?】

「ドラキュラ」のプロダクションは、英国のチャンネルBBC OneとNetflixの共同で行われることから、放送に関してもBBC OneとNetflixで同時放送が予定されています。これは、英国以外に住む人々にとってはとても歓迎すべきことですよね。Netflixだと基本的に英国以外でも見られるわけですから! 『シャーロック』と同じく全3話になる予定で、撮影は19年初頭から開始予定とのこと。そして、放送日は今のところ未定となっていますが、早ければ19年の秋頃には見られんじゃないかと希望的観測を持っています。

さて、いかがでしたでしょうか。モファット氏、ゲイティス氏曰く、「ドラキュラはヴァンパイア史上最も美しいヴァンパイア」とのことで、今回の新作ではその“美しさ”が強調された演出になるんじゃないかなと思っています。天才2人は彼らが創り出すドラキュラ伯爵のキーワードとして“Evil sexy”(イーヴィル・セクシー:邪悪でセクシー)という言葉を使っています。ニュアンスは日本で一時流行った“ちょいワル”と似てなくもないですが、スケールが違うという感じがします。ちょっとどころか、たっぷりワルです。

とにもかくにも早く観たいなぁ。少なくともトレーラーだけでも観たいなぁ。川合亮平でした。

文/川合亮平

【プロフィール】


川合亮平(かわい りょうへい)
通訳/翻訳者。「SHERLOCK/シャーロック」のベネディクト・カンバーバッチ、マーティン・フリーマン、「アウトランダー」のサム・ヒューアン、「ダウントン・アビー」の主要キャスト、映画「ファンタスティック・ビースト」シリーズのエディ・レッドメインなど英国著名人の通訳・インタビューを手がける。その他、「英語」「英国」をテーマにした執筆活動も行なっている。著書・翻訳書・関連書は「なんでやねんを英語で言えますか?」をはじめ、現在9冊。

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