出産分娩(ぶんべん)を取り扱う医療機関の拡充が求められる中、小田原市城山に来年1月4日、産婦人科医院が新たに開業する。老朽化に伴い機能移転した社会福祉センター跡地を活用。無痛分娩や不妊治療、全国的にうつ病発症が問題となる産後のケアなどに注力、多方面にわたって女性らの健康をサポートしていく。
新たに開業するのは「小田原レディスクリニック」。ロビーの天井は吹き抜けになっており、大きな木が伸びる天窓からは太陽光が差し込む。快適に過ごせるよう院内は川が流れる森の中をイメージ。“ホテルライク”にデザインしたといい、オーガニック料理を扱うカフェを併設するなど食にもこだわる。
木造2階建てで延べ床面積は約1400平方メートル、病床数は14室で全室個室だ。夫や子どもら家族が泊まれる部屋もあり、陣痛時などに子どもを預けられるキッズルームも設ける。
産後は助産師外来を受け付け、「ママの休み時間」チケット1枚をプレゼント。生後3カ月までの新生児を午前10時から午後3時まで預かるといい、「産後のお母さんたちは疲弊する。食事や美容院などでリフレッシュしてもらいたい」と院長の西原富次郎さん(42)は話す。
市福祉政策課によると、開業する場所は社会福祉センター跡地。同センターは1975年ごろから福祉や市民の交流の場として利用されてきたが、建物の老朽化に伴い、2014年4月に「おだわら総合医療福祉会館」(同市久野)内に機能移転した。
市は更地にして跡地を駐車場とする方針だったが、複数の事業者が跡地を活用した事業計画についてプレゼン。「分娩取り扱い施設が足りているとは言えない」と県西地区で開業を検討していた西原さんは、小田原駅からのアクセスの良さや市立病院が近く緊急事態に備えられる立地に着目した。市は市民貢献度の高さなどから西原さんの事業計画を選んだ。
土地は30年の契約で、17年8月から賃貸借。同月から同院の建物が着工し、今月完成した。市も国の補助金を活用しながら、16年度と17年度に設計費や建築費の一部として計7040万円を投じたという。
県医療課によると、県内で分娩を取り扱う施設は今年4月現在で143施設。横浜と川崎で半数以上を占め、県西地区(約6万3千ヘクタール)は小田原市(3施設)と松田町(1施設)の計4施設にとどまる。
市の担当者は「子どもを産み育てやすい地域になれば」と期待。また同院で22日に行った内覧会には約120人が訪れ「里帰り出産したい」といった声が寄せられたといい、西原さんは「一生に何度かしかないマタニティーライフを充実した環境で迎えてもらえたら」と話している。
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