東彼支局/石木ダム 初の司法判断

 県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダムの必要性を巡り、初の司法判断が示された。反対地権者らが国に事業認定取り消しを求めた訴訟で、長崎地裁はダムの公益性を一定認め、原告の訴えを退けた。

 原告は控訴し、福岡高裁で係争は続いているが、県と佐世保市が判決を「お墨付き」ととらえたのは明らか。付け替え道路の工事は着実に進んだ。建設予定地に住む13世帯は追い込まれたように映る。

 しかし住民らの表情に悲壮感は見られない。工事現場で連日座り込みを続けながら、常にユーモアを忘れず、明るく振る舞っている。彼らの強い信念と素朴な人間性が、共感を広げた1年でもあった。

 現地には作曲家の坂本龍一さん、歌手の加藤登紀子さんら著名人が訪れた。13世帯の日常を追ったドキュメンタリー映画も全国で公開され、小さな集落への注目度は急激に高まった。

 この状況を察知したのか、判決後は県と市のPR活動も活発だった。だが、住民を強制排除する行政代執行に踏み切れば、世論の反発は必至。裁判の結果とは裏腹に、むしろ行政側にこそ、追い込まれた焦りを感じた。

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長崎地裁は石木ダムの公益性を認め、事業認定取り消しを求めた原告の訴えを退けた=7月9日、長崎地裁前

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