バス待ちの間にいつも気になっていた『maunga 御岳本店』【気になる山ショップ#2】 JR青梅線・御嶽駅から徒歩1分。御岳山ケーブル駅へ向かうバス停の目の前にあって、数年前から気になっていた『maunga御岳本店』。壁や看板には「中古」「2nd hand」の文字があり、「中古のアウトドア道具店って珍しいなぁ」と思っていました。そこで今回初入店。果たして、どんなお店なんでしょう!

ノリで開業、早6年!

「こんにちは~」、店の前で送られてきた荷物の開封作業をしているスタッフと思しき方に声を掛けると、間髪入れずに元気に満ちた「こんにちは!」の声が戻ってきました。作業の手を止め笑顔で振り返ってくれたのは、細身でヒゲを生やした山小屋にいそうな雰囲気の男性。彼が『maunga御岳本店』の店長さんで、吉祥寺店、奥多摩店と3店舗を運営する会社の代表取締役・遠藤浩史(えんどう ひろふみ)さんでした。

発端は『仲間内で行っていた、使わなくなった道具交換』

もう、だいぶ前から御岳山ケーブル駅に向かうバス待ちで気になっていたお店。でもバスがすぐに来るので入ったことがありませんでした・・・。オープンから何年くらい経つんですか?

「オープンは2012年です。当時はガイドツアーをしていたのですが、その仲間内で使わなくなった道具を交換していて、これお店にしたらいいんじゃない!? なんてノリだけで開業したのが始まりです」

元々、他人がやっていないことをやってみたくなるという性格だそうで、だから当時アウトドア道具の中古店がなかったことも、勢いに拍車を掛けたといいいます。

“子供が生まれた” “年齢的なこと”…使わなくなる理由はさまざま

とはいえノリだけでなく、聞けば、考えや想いもきちんと持っていらっしゃいます。

「今でこそメルカリ等で中古のアウトドア用品を売り買いする人が増えてきました。それでも、結婚して子供が生まれてハードなアウトドアスポーツを奥さんに止められたり、高齢になって高い山に登れなくなったり、子供が成長してキャンプに行く機会が減ったり・・・。また新しい山道具を買って、前に使っていた道具がどんどん増えている等々、理由は様々ですが、自宅で眠っている道具って結構多くあるんです。そのまま使わずに劣化させてしまったり、捨ててしまってはもったいない。それらを買い取り、必要とする人に使ってもらう手助けになれればと思ったんです」

遠藤さんが話してくれたこの考えは、『無駄を排し、シンプルに生きる』という意味で、とてもアウトドア的と言えるでしょう。

きちんとメンテナンスをすれば長く使えるのがアウトドア道具

そこで、遠藤さんのアウトドア歴を尋ねてみました。

「19歳の時に訪れたオーストラリアでラフティングを初めて経験したんです。もう、それが楽しくてハマってしまいました。するとガイドになればオーストラリアに住めると聞き、すぐにガイドになることを決めたんです。

オーストラリア北東部の都市ケアンズの近郊にタリーという街があって、その近くに流れるタリー川がラフティングのメッカなんです。そこでラフティングガイドとして2年働き、その後、ニュージーランド、北海道と渡り歩き、ガイドとして過ごしました。ちなみに店名の『maunga』は、ニュージーランド原住民マオリ族の言葉で “山”という意味です」

その後、アウトドアメーカーで働き、ギアを勉強。生産ラインだけでなく、修理の方法も学び、中古品を再び活用できるようにするノウハウを身に付けたそうです。それが現在の中古道具を買い取り、販売する際の基盤となっているといいます。

「クルマをはじめ洋服やインテリア、雑貨などには中古を売るお店があるのに、アウトドア道具だけないって不思議だなとも思ったんです。元々、きちんとメンテナンスをすれば長く使えるのがアウトドア道具ですし。
それに例えば、登山、特に雪山登山に使う道具って高価です。それらを安く中古で買い揃えられれば山へと向かうハードルが下がるし、もっと多くの人が自然の美しさに触れる機会が増えるとも思うんです」

確かに、中古であっても、よいものを安く買い揃えれば、山に何度も登りに行けます。登山は季節によって揃えなければいけないものが多いので、中古道具をうまく活用するのは賢い方法です。

「海以外の外遊びがなんでもできる」御岳の自然と、そこに集まる人々

ところで、御岳でお店を始めようと思ったのは、なぜでしょう?

「僕は東京の杉並出身なんですが、小さな頃から外遊びが好きで奥多摩にもよく来ていました。都心から近いのに、これだけの自然があるのはいいなぁと感じていたんです。

それに御岳って海以外の外遊びがなんでもできるんです。山で登山やトレイルラン、岩でボルダリング、川で釣り、カヌー、カヤック、ラフティング、そしてSUP。僕は仕事前にパックラフトをよくやるんですが、そういうことができる環境のよさが、御岳を選んだ理由のひとつです」

聞けば、遠藤さんの知り合いには、御岳付近からSUPに乗って多摩川の河口の羽田まで下るという凄い人もいるそうです。自然環境のよさはもちろん、その環境が好きで御岳、そして奥多摩で暮らし始めた人達のコミュニティのよさも感じました。こんなエピソードもあります。

「近所にお住まいの年配の方が、この60年代に作られた『カドタ』というブランドのアイゼンを「勉強のために」と譲ってくれたんです。片方だけなんですけれどね、今でも使えますし、昔の人はこういう道具を使って山に登っていた訳で、どんだけ大変だったんだろうかと改めて感心しました。お店をやっていると、他にもいろいろな手助けや協力をいただけて、本当に感謝しています」

遠藤さんと話していると、言葉のひとつひとつからそのやさしさを感じられます。登山専門店のオヤジ的な威圧感は皆無。きっとお客さんも、またmaungaに来ようと思うに違いありません。

中古アウトドア用品店店主ならではのおすすめギア

最後に取材当日に店頭にあった道具の中から、おすすめを伺いました。

「今時、登山ではもっと軽量コンパクトなストーブが多くありますが、『コールマン』のピーク1のFEATHER400というストーブです。これは97年製。シンプルな構造で長く使えるもので、好んで使われている方がいらっしゃいます。
他には、昨日までいい感じのピッケルが5本くらいあったんですが、あっという間に売れちゃったんです。テントや寝袋も、よいものはすぐに売れてしまいますね。また女性用のウエアは、数が少ないということもありますが回転が早いです」

maungaでは販売だけでなく、買取りも行っていますよね。

「はい、店頭だけでなく、ダンボールに詰めた道具を宅配便で送っていただき、査定することも可能です。もし使わない山道具があれば、是非ご利用ください。詳細はお店のホームページを見てください」

筆者も道具を厳選して、なるべく多くを持たないようにしていますが、それでも少しずつ増えてしまいます。遠藤さんによると「タグも付いたままの未使用品が送られてくることもある」といいます。使わない山道具はmaungaを通して、使いたい方の元へと送るのが道具のためかもしれません。

来訪後記

道具は使ってこそ、道具。欲しかった山道具を安く買えるという利点ももちろんあります。でも、それに加えて、使わなくなった道具をお店に持ち込み、査定をしてもらいながら、遠藤さんと道具談義で盛り上がるのも、このお店の楽しみだと感じました! 実際、かなり前に使ったことのあるシグのファイヤージェットというストーブがあり、その話からいろいろな道具の話、そして登った山の話をして、フツーのアウトドアショップとはまったく違う時間を過ごせました。

【2nd hand outdoor gear store maunga(マウンガ)】

住所:東京都青梅市御岳本町359
TEL/Email:0428-74-9235 / info@maunga.jp
営業時間:9:00~19:00(平日)/8:00~19:00(土日祝日)
定休日:無休(休業のお知らせはHPに掲載)

© 株式会社スペースキー