<レスリング>【2018年全日本選手権・特集】階級アップに成功! 来年は世界へ挑戦…男子フリースタイル86kg級・高谷惣亮(ALSOK)

(文=渋谷淳、撮影=矢吹建夫)

優勝後は恒例のパフォーマンス

 男子フリースタイル86kg級は高谷惣亮(ALSOK)が74、79kg級を含めて通算8度目の優勝。決勝でフォール勝ちしたあとは、テレビドラマ化もされた人気漫画『今日から俺は!!』のパフォーマンスを披露し「今日から俺は86kg級です!」と胸を張った。

 74kg級で2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロと2度のオリンピックに出場した高谷。今回の大会では前日の準決勝では松坂誠應(自衛隊)に苦戦し、さすがの高谷でも階級アップの壁にぶつかったのか、と心配された。

 しかし、日をあらためての決勝では世界選手権代表の白井勝太(日大大学院)に2分43秒、圧巻のフォール勝ち。優勝後のインタビューでは「準決勝はちょっとだけ見合ってしまったので、決勝は自分らしく思い切って攻めようと思った。白井選手は思い切りタックルにくる選手なので、僕としては相性がよかったかな」と涼しい顔で答えた。

力負けはしなかった86kg級でのデビュー戦

 いくら実力者といえども、74kg級から86kg級に上げての挑戦は簡単ではないだろう。階級を上げるにあたっては、拓大時代の恩師、西口茂樹・日本協会強化本部長とも相談し、今年6月の全日本選抜選手権にはまず79kg級で出場。ここで優勝し、慣れ親しんだ世界選手権の舞台にも立った。

決勝は世界選手権代表を一蹴

 今大会で86kg級のデビューを果たし、「動きが重いとかは全然なかった。むしろずっしりきて、相手の力にも負けなかった」と十分に手ごたえを感じている。

 特別に筋力トレーニングはしなかったというものの、高谷が成長の要因に挙げたのが体幹トレーニングだ。拓大の先輩でもあるロンドン・オリンピック金メダリスト、米満達弘・現自衛隊コーチがオリンピック前に体幹トレーニングを重視していたことを聞きつけ、これを参考に体幹トレーニングに力をいれて今大会に臨んだという。

 今後は、いよいよ世界的により層の厚い86kg級で猛者たちと闘うことになる。厳しい試合が予想されるが、日本の中量級第一人者からは「世界の86kg級は背の高い選手が多いので、僕のタックルが入りやすいと思う」と頼もしい言葉。2日連続のリミット計量がスタートすることも、「追い風になると思います。海外の選手は体重を落としてくるので、初日に当たればけっこうなアドバンテージになる」とルール変更も歓迎した。

 来年はオリンピックの前年となるが、2019年の抱負を問われると「勝ち負けにこだわらず、2020年に向けて鍛えていきたい。まだ伸びしろはあると思う」と答え、ベテランらしく肩に力は入っていない。国際大会に向けて、より86kg級にふさわしい“ニュー高谷”を作り上げるつもりだ。

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