春日集落(潜伏キリシタン世界遺産)への来訪者急増

 7月に世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本の12資産)の構成資産に含まれる長崎県平戸市春日町の「春日集落」の来訪者が急増している。7~11月の来訪者数は1万2600人で、前年同期と比べ22倍に。住民は「これほど人が来てくれるとは」と世界遺産効果に驚いている。

 ■イベント多彩

 春日集落は平戸島北西部に位置する約70人の小集落。約450年前の戦国時代にキリスト教が伝わった。住民は禁教期に「潜伏キリシタン」としてひそかに信仰を守り、1873年の信仰解禁後は、「キリシタンの神様」と神仏を併せて拝む禁教期の伝統を続ける「かくれキリシタン」になった。

 好調の要因は4月に開設した案内所「かたりな」の存在。集落を知り尽くした80~90代の女性が「語り部」を務め、来訪者と触れ合うスタイルが好評で、何度も訪れる人が相次いでいる。集落の見どころを巡るウオークや、夜間のライトアップなど多彩なイベントも功を奏した。

 禁教期の暮らしを想起させる棚田が広がる景観も来訪者の心をつかんだ。28日に訪れた東京の陶芸家、海老澤希衣子さん(47)は「棚田の風景や石積みが素晴らしく、キリシタンが紡いできた歴史に感銘を受けた」と満足げ。春日町のまちづくり団体「安満の里 春日講」の寺田一男会長(69)は「今後も住民一丸で景観の維持に努めたい」と語る。

 ■全体は6割増

 登録前から広い駐車場を備えたビジターセンターや資料館を整備し、受け入れ態勢を整えた「天草の崎津集落」(熊本県天草市)も2・3倍(5万2千人増)の9万1500人と来訪者数を大きく伸ばした。

 県によると、無人島の「中江ノ島」(平戸市)を除く11資産を7~11月に訪れた人は、前年同期と比べ約6割増の計43万7500人。県世界遺産課は「簡単には行けない離島の資産も多い中で、まずまずの数字」とみている。

 国内の世界遺産は登録直後こそ観光客が急増するものの、効果は1~2年しか続かず、やがて登録前の水準に戻ってしまうことが多い。平戸市文化交流課は「一過性のブームに流されず、住民が世界遺産の価値を伝えるすべを身に付けていきたい」としている。

 ■その他の資産の7~11月の来訪者数は次の通り。

 大浦天主堂(長崎市)22万2600人(前年同期比1・2倍)▽原城跡(南島原市)2万8千人(同4・9倍)▽外海の出津集落(長崎市)2万6900人(同2・2倍)▽頭ケ島の集落(新上五島町)2万3千人(同1・3倍)▽久賀島の集落(五島市)9200人(同2・7倍)▽奈留島の江上集落(五島市)8500人(同2・5倍)▽外海の大野集落(長崎市)8200人(同4・3倍)▽黒島の集落(佐世保市)4千人(同1・9倍)▽野崎島の集落跡(北松小値賀町)3千人(同1・5倍)

世界遺産登録後、来訪者が急増した春日集落=7月、長崎県平戸市春日町

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