【平成の長崎】被爆天主堂の花嫁 片岡さんと判明 平成21(2009)年

 写真展「幻の世界遺産 被爆遺構・旧浦上天主堂の記録」で公開されている、破壊された天主堂を背にした結婚式の写真。その写真に写っている花嫁が、長崎市石神町の片岡カツ子さん(76)だと14日、分かった。隣を歩く仲人は、同市昭和1丁目、池永文子さん(87)で、被写体となった女性2人は、半世紀前の自らの姿と対面し「驚いた。懐かしい」と感慨ひとしおの様子だった。
 写真は、被爆者で写真家の高原至さん(85)が撮影した。
 池永さんのいとこが、写真展を紹介するテレビ番組で写真を見て、池永さんによく似ていると同日、写真展を訪れた。写真を見て、池永さんに間違いないと確信。ナガサキピースミュージアムの増川雅一専務理事に申し出たことから、2人の所在が明らかになった。
 仲人の池永さんは、結婚式のことはよく覚えていないとしながらも、「写っているのは、私に間違いない。びっくりした」と驚きを口にした。
 片岡さんによると、写真は1958年4月ごろ撮影された。片岡さんは「当時、教会で結婚式をするのは、カトリック信者だけで荘厳だと感じたのを覚えている」とし、「思いがけないところから、自分が写った写真が見つかり驚いている。懐かしくうれしい思いと、亡くなった主人を思い出し、悲しみとが入り交じり、複雑な気持ちだが、どきどきしている」と話した。
 片岡さんと池永さんは15日、同ミュージアムを訪ね、51年前に撮影された写真と“対面”する予定。
 高原さんは「感無量、信じられない。言葉もないくらいうれしい。20歳から65年間、シャッターを切ってきてよかった。カメラマン冥利(みょうり)に尽きる」と興奮気味に話した。
(平成21年7月15日付長崎新聞より)
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【平成の長崎】は長崎県内の平成30年間を写真で振り返る特別企画です。

懐かしい写真を見て笑顔の片岡さん(上)と池永さん=長崎市内

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