あらたまの年の初めに

 丸々として愛らしかったり、勇ましく元気がよかったり、届いた年賀状一枚一枚に色も姿かたちも違うイノシシが描かれていることだろう。多くのお宅に、今年最初のお客さんとして干支(えと)のイノシシたちがやってくる▲漢字の「亥(い)」には「骨組み」の意味があり、「草木の生命力が種の中に閉じ込められた状態」も表すという。なるほど、今年の干支が勢いよく突き進むイメージとどことなく重なる▲種からいずれ芽が出て、伸びていく。そんな生命力を宿す「亥」の1字は、これから先の成長や可能性を思わせる。元号が平成から改まり、新しい時代が来るこの年が、成長や可能性を伴う一年でありますよう。2019年が幕を開けた▲昨年は、月を追うごとに平成の世を顧みる記事や映像に触れる機会が多くなった。もうしばらくは、目線は前に向けつつも「去りゆく平成」を振り返る時期が続くのだろう▲思えば、平成元年に産声を上げた人が今年で30歳になる。平成という時代はやがて過去になるとしても、その時代に生まれた人たちが次の時代を担うと思えば頼もしい▲イノシシの肉を食すれば万病の予防になるとされるためか、亥年は無病息災の年と俗に言う。次の時代に移る節目は、災いなく、無事に過ごせる一年でもあれと、あらたまの年の初めに願う。(徹)

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