【三浦半島・西海岸物語8】「世界に一つのものづくり」 かいのどうぶつえん@葉山

「園長代理」のチンパンジーを手にする角田さん=葉山町堀内

 チンパンジーにリス、演奏を楽しむカエルの楽団、おみこしを担ぐウサギ…。葉山町堀内の角田元さん(73)は、貝殻を組み合わせ愉快な動物たちを作る貝工房「かいのどうぶつえん」を約20年前から続けている。700種類以上を手掛け、教室や作品展で「世界に一つのものづくり」の魅力を伝えてきた角田さんは「誰かと作品を見せ合えば、新たな発見がある。自然に親しみ、楽しい世界が広がるきっかけに」と笑顔で語る。

 白の小貝を何十個も重ねると、もこもこした羊に。開いたアサリを口に見立て目を付けると、満面の笑顔のカエルが登場だ。「どうぶつえん」に暮らすのは目も口も手足も、全身が貝殻製の動物。地元の海岸などで拾った貝を接着剤で組み合わせる。昆虫に恐竜、妖精もいる。約束は「割らない、塗らない、削らない」。自然のままを生かし、同じ“命”は二つとない。

 葉山で生まれ育ち、広告マンとして広告会社に長年勤務した角田さん。釣りや素潜りが好きだったが、貝殻に興味はなかった。20年前、妻の憩さん(70)と逗子海岸を散歩した時にきれいな桜貝や宝貝を拾った。

 「これで何か作れないか」と考え、犬や猫を作って家族に見せた。「何これ?」と言われるとがっくりくるが、意図が伝わるとうれしい。すっかりはまって動物たちが増え、自宅の玄関前で毎週新作を展示しており、739回を数えるまでになった。

 地元で始めた作品展や教室から広がり、依頼も増えて茨城や静岡などでも教室を開催した。保育園児からお年寄りまでが楽しんで参加する姿を刺激に、作品への反響、貝の専門家らから教えてもらう新たな知識など、ものづくりを通じた出会いが励みという。

 一匹ずつに物語がある。シロイルカとペンギンの出会いがテーマの作品は、コロナ禍で休館の水族館を散歩するペンギンの映像を再現した。「南極と北極育ちの知らない者同士が出会い、ほっとしているところ」。そんな物語に思いを込める角田さんは「ものづくりは1人の作業でなく対話。最近は年で手が震えてきたけれど、新しい作品に挑戦し続けたい」と笑った。

 工房は自宅のため一般公開はしていない。作品展や教室は図書館や博物館、店舗などで随時開催し、今夏も町立図書館で作品展を開く予定。ホームページでも作品を公開中。問い合わせはメール(info@zoo-shell.com)で。

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