自動車ライター 伊藤 梓が選ぶ! 本当は教えたくない穴場ドライブスポット

マツダ CX-3 XD × 伊藤梓「秋の山梨ドライブデート」

伊藤 梓さんが愛車のマツダ ロードスターで行きたいドライブスポットとは?

その土地の“空気”を感じながら走るドライブは、一番の楽しみ

マツダ CX-3 XD × 伊藤梓「秋の山梨ドライブデート」

私は普段マツダ ロードスターに乗っており、雨が降っているとき以外は基本的に屋根を開けて走っていることが多い。普通の乗用車に乗っているよりも、空気の質感やにおいを感じている瞬間が多いと思う。都会を走っていると、曲がりくねった首都高や綺麗な夜景など楽しめる場所も多いが、「空気を感じる」という点においては、やはり田舎に勝るものはない。

私の実家は、東北地方の山形県にあって、東京からは片道約5時間はかかるものの、大型連休やお盆、年末年始などはよくクルマで帰っている。それはもちろん、クルマがないと不便ということもあるが、一番の理由は山形の空気が大好きだからだ。

春夏秋冬、どの季節も好きだけれど、一番「山形に帰ってきたなぁ」と感じるのは、やっぱり雪が降る冬の季節。これは誰に言っても信じてもらえないのだが、私にとっては東京より山形の冬の方があたたかい。「家がそういう特別な作りで、ストーブもあるからでしょう」と言われるかもしれないが、そうではなく、外での話だ。雪がたくさん降ってあたり一帯に雪が積もっていると、東京のように冷たい風が突き刺さるような寒さはなく、体感ではほっこりあたたかいのだ。

私は寒いのは得意ではないが、雪は大好きで、空気のにおいを嗅ぐだけで明日雪が降るか否か判別できてしまう。もちろん、雪が降っているときにはオープンにしてドライブには行けない。それでも雪のひんやりした空気を感じながらドライブしたい……。そんな無理難題と思えるような私の要望を叶えてくれる場所が山形にはある。

5月の鳥海山は、雪のあたたかみに触れられる最高のドライブスポット

マツダ ロードスターRF

山形県と秋田県の境目にそびえ立つ「鳥海山」。ここは標高が約2200メートルあり、5月頃になっても道路脇にまだ雪が残っているのだ。それもちょっとした残雪ではなく、10メートルほどもある雪壁として。

この雪壁が見られる鳥海ブルーラインは、11月上旬〜4月下旬までは積雪のために通行止めになっていて、それが解放された頃にオープンで走りに行くことが、私にとっては最高のドライブだ。

すこしだけ暖房を入れながら、美しい雪壁と鼻の奥にツンとくる冷たい雪のにおいを感じながら、道を駆け抜ける。こんなに自然と一体になれる瞬間はないと思うくらい、すべてを忘れて、その空気やクルマに溶け込んでいく感覚。雪のあたたかみと凛とした空気を感じるなら、これ以上の場所はないと思う。

ちょっと誰かに教えるのはもったいないくらい、私にとって特別なドライブスポットだ。

[筆者:伊藤 梓]

◆自動車ライター 伊藤 梓さんがこれまでオートックワンで試乗した車の一部を写真で見る

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