【平成の長崎】2012北信越かがやき総体 佐世保西男子ソフトV 平成24(2012)年

 全国高校総合体育大会(インターハイ=2012北信越かがやき総体)第11日は8月7日、新潟、富山、石川の3県で5競技を行い、長崎県勢はソフトボール男子の佐世保西が、2003年長崎ゆめ総体以来、9年ぶり2度目の優勝を果たした。決勝は九産大九州(福岡)に、九回タイブレークの末、1-0でサヨナラ勝ちした。

 ■ライバル大村工を破り自信を手に/笑顔で重圧乗り越え

 0-0で迎えた延長九回裏、佐世保西無死満塁の好機。打席に向かう主将の冨士に、次に控える分藤が満面の笑みを浮かべた。「もし駄目でも俺がいるから」。緊張で逃げ出したくなるような空間。そこで冨士も笑った。最後の瞬間にこのチームの強さが凝縮されていた。

 4月に就任した津本監督はプレーを見て、感じた。「能力が高い。日本一も狙える」。3月まで指揮を執った久田前監督(県体協)の下、徹底的にたたき込まれていた基礎。あとは「自分たちもやれるんだという自信、最高のプレーをするための雰囲気。それだけだった」(津本監督)。

 長崎県内にあまりにも大きな壁があった。昨夏の王者、大村工。ここ数年は敗戦を重ね「こんなに練習しているのに」ともどかしさだけが募った。でも努力は裏切らない。6月の県高総体でライバルを撃破。7年ぶりの全国切符と、何より欲していた自信を手にした。

 ただ、それは見えない重圧との始まりでもあった。大村工に勝利-。膨らむ期待。勝った責任。もし負ければ言われるだろう。「大村工が出てたらよかったのに」と。

 その重圧を全員で乗り越えた。決して途切れることのない声。どんなに緊迫した場面でも気負わない。笑顔が与える力。練習に裏付けされた確かな技術。2年生エース吉田の好投もまた、周囲に盛り上げられ、気持ち良く投げた結果だった。

 最後は冨士のたたきつけた打球が三塁手の頭を越えた。9年ぶりの歓喜。準決勝まで表情一つ変えなかった津本監督が、やっと相好を崩した。「僕だってずっとうれしかったんですよ」。青空の下、みんなで笑った。(平成24年8月8日付長崎新聞より)
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【平成の長崎】は長崎県内の平成30年間を写真で振り返る特別企画です。

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