春の七草

 野趣あふれる風味。子どもの頃はおいしいと感じなかったが、今年1年を健康に過ごすためにと言われて我慢した記憶がある。七草がゆを食べるのは、きょう1月7日の習わし▲春の七草をかゆに入れて食べ、無病息災を祈る風習は、平安時代に中国から伝わり、江戸時代に庶民に定着したとされる。七草にはビタミンなどの栄養素が豊富で、正月のおせち料理でもたれた胃腸をいたわる効果があるという▲七草はセリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ(カブ)、スズシロ(ダイコン)。カブとダイコン以外は、身近に生えている野草だ▲冬枯れの野や畑で、春の到来を先取りするように若葉を出す七つの菜。昔の人はそのみずみずしい生命力を貴び、食べてあやかろうとしたのだろう▲旧暦だった時代に比べ、今は1カ月ほど季節感が早い。七草がゆは野外で材料を調達するというより、栽培された七草のパックをスーパーなどで買って作ることが一般的になった。道端でこれらの野草を見ても、それと分かる人は今や少ないかもしれない▲時代の変化に伴って、日本人の食生活も少しずつ変わっていく。だが、七草がゆを食べる習慣は廃れずに続いてきた。一年をつつがなく無事に過ごしたいという人の思いは、いつの世も変わらないからだろう。(泉)

© 株式会社長崎新聞社