返礼は「空き家の見回り」?! ふるさと納税で人材活用 二宮町

 増え続ける空き家の対策として、二宮町はふるさと納税の返礼品のラインアップに「空き家見回り作業」を加えた。町内に実家などがある町外在住者がターゲットで、同町によると同様のサービスは県内では鎌倉市に続き2例目という。実際に見回り作業を行うのは地元の高齢者。40年後には人口が半減する見通しの同町が地域の人材活用と空き家対策とを両立させる“奇策”で活路を見いだそうとしている。

 見回り作業は一戸建て住宅が対象で、町シルバー人材センターに登録した高齢者の有償ボランティアが担当する。外から壁や屋根の状態のほか、庭などで雑草の繁茂状況などを確認し、写真で報告する。寄付金額は1万2千円。

 国の研究機関の推計によると、ピーク時に3万人を超えた町人口は2060年には1万4千人まで落ち込む。1960年代の大規模住宅開発以降、人口流入も止まり、高齢化が急速に進む。昨年11月30日現在で65歳以上の人口比率は34・11%。町が2015年度に行った調査では町内に254軒の空き家があり、町も空き家バンクの開設や無料相談会などの対策を続けてきた。

 一方で、高齢者約180人が登録する同人材センターでは、地域の住宅に有償で植木の剪定(せんてい)や庭の除草などを行ってきた。町外に暮らす利用者から住む人のいなくなった実家での作業依頼も年間70件以上あることから、昨年から空き家対策に本腰を入れることに決めた。

 同町と同人材センターは昨年9月に空き家対策で協定を締結。町が空き家所有者と見守り役となる同人材センターの高齢者との橋渡しをすることになった。

 今回はさらに踏み込んでふるさと納税の返礼品に加えた。町は「家が一度荒れてしまえば、さらに足が遠のく。空き家の荒廃を未然に防ぎ税収確保にもなる。一石二鳥」と説明する。

 一方、どこまで需要を吸い上げることができるかも課題だ。鎌倉市では「親孝行代行」と銘打った返礼品で、空き家の見守りに加え、買い物からごみ出し、墓の清掃まで至れり尽くせり。それでも、これまで3年間での申し込みは13件のみ。先行事例を踏まえ、同町担当者も「すぐにニーズが増えるわけではない。少しずつ実績を積んでいきたい」と話す。

 見回りを希望する場合は事前に同人材センターへの連絡が必要で、問い合わせは電話0463(71)0681。ふるさと納税は専用ページ「ふるさとチョイス」や「楽天ふるさと納税」から行うことができる。

二宮町内に250軒以上あるとされる空き家。管理が行き届かず荒廃する物件も多い(二宮町提供)

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