復興に向け、共に歩んでゆく~佐藤寿人選手(名古屋グランパスエイト)

インタビューのダイジェスト

7月の発災当時、僕は名古屋にいました。かつて暮らした広島の信じられない光景を見て、どうにかしたいという思いはありましたが、遠く離れた地にいること、シーズン中ということもあり、状況すら把握できないもどかしさがありました。

チームメイトの宮原選手と「何とかして支援活動ができないかな」と話していて、オフの日に一日だけ、広島市安佐北区の口田小学校に行くことができました。がれきや土砂の撤去を手伝いながら、自分の力は小さいなと思いましたし、広島を離れていると、正直「何もできないな」という思いもありました。しかし、広島の想像以上の被害を見過ごすことができませんでした。広島でプロサッカー選手としてたくさんの応援をもらった僕は、サッカー選手として、何か支援ができないか、と。そんな折、東京ヴェルディの橋本英郎選手が「何かできないかな」と声を掛けてくれたのです。橋本選手の奥様が瀬戸内出身ということもあり、広島の心配をしてくれていました。

イベント開催に向けて、選手に声を掛けていくと、広島にゆかりのあるたくさんの選手が思いに賛同し、集まってくれました。「子どもたちの笑顔が見たい」と思いを一つに開催しましたが、どの子どもも笑ってサッカーを楽しんでくれました。選手たちともそんな時間を共有でき、やってみて本当によかったと思っています。一緒にサッカーをすることで、子どもたちの笑顔が見られたのが、自分たちの喜びです。

僕たちは広島に住んでいないので、いろいろと難しいこともありましたが、広島在住の人に連絡をして、多くの支援と協力を得ることができ、今日のチャリティーサッカースクール開催の日を迎えられました。正直、心配事の方が多かったのですが、いろいろな人が準備をしてくれて無事開催できたことに、まずはほっとしています。

僕と橋本選手が発起人となってスタートしたプロジェクトですが、今後の継続も、支援の輪を広げていくのも、大切なことと思っています。すべてが最初からうまくできるとは思ってはいません。「もっとこうしたら、子どもたちが喜んでくれるのでは」と改善しつつ、できる限り広く賛同が得られるよう、プロジェクトの発信をしていきたいです。

2011年の東日本大震災時、僕は仙台でプレーしていました。今も、毎年仙台に足を運んでいますが、それは「継続って大切だ」と思うからです。自分たちが被災地の現状を知り、何が復興に必要なのかを知り、「今」を発信することが大切だと考えます。例えば広島では、現在もJR芸備線が不通だとか、いろんな問題が起こっています。広島県内にいれば知ることもできますが、離れている人は、そんなことは全く分からないもの。だからこそ、発信力のある僕たちが現状を知り、発信し、広島への思いを一つに盛り上げていきたいのです。

今後もより多くの人に「行きたいな」と思ってもらえるイベントになるよう、継続して開催していきます。広島の皆さんからは「こういうことをしてほしい」という思いを届けてほしいです。ぜひ、メッセージを寄せてください。

最後に、賛同し参加してくれた選手の皆さん、この会場を提供してくださった広島経済大学さん、運営を手伝ってくださった広島経済大学女子サッカー部の皆さん、おいしいお好み焼きを焼いてくださったオタフクさん、支援金を寄せてくださった皆さんに、深く感謝申し上げます。

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