【軽仮設リース業協会創立35周年】〈関山正会長(日建レンタコム会長)に聞く〉建設現場の〝安全・安心〟に貢献 安全守れる適正価格を維持、機材拠点の効率化・作業環境改善も課題

 軽仮設リース業協会が今年6月創立35周年を迎える。これまで、安全な軽仮設機材の安定供給で建設現場の安全と安心を陰から支えてきた。各種動態調査や研究資料の公表は、会員企業にとって重要な指標。各種広報活動は、業界の社会的地位向上にも貢献している。今年は、東京五輪関連工事が佳境に入り、昨年日本列島を襲った自然災害の復旧・復興事業も待ち構える。協会のこれまでの活動を振り返り、様々な指標から今後軽仮設リース業界が取り組むべき課題、協会の担うべき役割などについて、関山正会長に聞いた。(後藤 隆博)

――軽仮設機材のメインマーケットである建設業界の動向をどう見るか。

 「今年も総じて堅調だと思う。東京五輪関連の本工事は、ほぼ今年一杯で終わりそう。我々軽仮設リース業界では、五輪関連工事がある程度終わった後の建設需要を懸念する向きもあるが、大都市圏を中心とした再開発事業やメンテナンス補修・リフォーム、耐震・免震工事などの需要はしばらく続くだろう。大手ゼネコンもかなりの受注残を抱えている模様。2025年に大阪での万博開催が決まったのも、我々業界にとっては明るい話題だ」

軽仮設リース業協会・関山会長

 「国土交通省が行っている軽仮設機材の稼働率動態調査では、直近数年間の年間平均稼働率は60%超の非常に高い水準で推移している。賃貸売上高も高水準で、月次ベースでは直近5カ月連続で200億円を突破している。現行調査を開始した2010年以降、かつてない上昇機運が続いている」

――昨年、解体現場の足場で一般通行人を巻き込んだ事故が発生した。建設現場の事故件数自体はあまり減っていない。

 「協会の最重要使命は、安全な仮設機材の安定供給により建設現場の安全、安心を陰から支えること。ほとんどの事故は現場の不注意や仮設機材の誤った使い方などから発生しているもので、仮設機材の品質が原因で起きた事故はない」

 「『安かろう、悪かろう、危なかろう』の風潮が蔓延する過度な安値競争に陥ると、必ず機材の品質低下を招く。品質の低下は、現場の事故多発に直結。安全機材の安定供給のためにも『安全が完璧に守れる』適正価格の維持が絶対に必要だ。協会はこれまでずっと会員各社に周知しており、現場の安全に貢献してきたと自負している」

 「厚生労働省も、墜落、転落による死亡災害を減少させるために労働安全衛生規則の改正を行った。新しいより安全な機材も開発され、一部現場で使用され始めている。こうした機材の普及、安全教育による作業員の安全意識向上も課題であろう」

――協会の具体的な活動内容を振り返りつつ、今年の注力事項は。

 「全国各地の支部活動、市場調査によるユーザーニーズに合わせた情報提供や官公庁への調査資料提出など、官民一体となった啓発活動を続けている。昨年も協会会員各社が協力し、安全で安心できる機材の出庫、新たな安全機材の積極的保有なども推進し、建設現場に貢献してきた」

 「会員間の情報共有やコミュニケーションを図る目的で毎年行っている本部支部合同意見交換会は、従来東京でのみ行っていたが、より綿密な意見交換や懇親を行いたいという会員会社の要望に配慮し、16年に大阪、昨年は名古屋と2回支部で開催した。支部間で生の声を共有化でき、本部が地方の状況を把握しやすいなどのメリットもあるなど、参加者からは非常に好評だった。今後も、隔年で支部での開催を検討していく」

 「当協会は、少ない人員・予算で非常に大きな効果を上げていると思う。会員皆が建設現場への安全貢献という共通認識のもと、ボランティアで協会の活動に携わっている環境は誇らしく思う」

――仮設リース業界に限らず、最近は現場や配送面での人手不足が深刻になっている。堅調な建設需要が当面見込まれるなか、協会としての対策は。

 「建設現場における作業効率化、省人化などに対応する新たな安全機材保有などが必要だろう。昨年当協会が行った最新機材保有量実態調査結果を見ても、会員各社が経年機材の入れ替え、効率機材の導入に舵を切っている傾向が伺える。また、メーカーとともに人手不足に対応できる効率的な機材の開発などにも注力していく必要があると思う」

 「安全機材の安定供給のためには、各社機材センターの労働力、仮設機材を検収整備する協力会社の人材確保が重要。軽仮設の機材センターは、いわば3K(きつい、汚い、危険)の最たる現場。工場人員の作業環境や待遇面の改善、工場内のロボット化・自動化に向けた整備・投資を行い、少ない労働力で生産性を高める努力が大事だ」

 「トラック、ドライバーの手配難は当業界だけの問題ではない。今後は、建設現場との協議も含めて待遇改善への取組みが必要。将来的なことを考えれば、外国人労働者の活用なども検討せざるを得ないだろう。まずは、国がきっちりとガイドライン、対策を講じるべきだ」

――会員の推移について。協会発足以来、正・賛助会員は随分増えた。

 「発足当時52社だった会員も、正会員93社、事業所会員133社、賛助会員39社(18年11月末現在)にまで増えた。協会の活動に賛同してもらえる同業者がいかに多いかという表れだと思う。最近では、既存会員会社と取引関係のある異業種企業も賛助会員として加入しており、新たなビジネスモデルなどで様々な意見交換が行われている。会員以外でも希望者があれば懇親会に出席してもらうなど基本的に大きく門戸は広げており、協会の活動に賛同、協力してもらえる企業を今後も募っていきたいと思う」

――オーナー系会員会社も二代目、三代目と世代交代が進み、ここ数年で協会の理事も大幅に若返った。

 「理事だけでなく、若い世代にはもっと協会の活動に積極的に参加してもらいたい。総会、理事会、支部会、賀詞交歓会などへの参加により、会員間での信頼関係を深め、将来の協会活動を担っていける人たちがどんどん出てきてほしいと思う。また、そうした人材づくりも我々現役世代に課せられた使命。若い優秀な会員が集まって、建設現場の安全・安心維持のための新たな協会活動をけん引してもらいたい」

--最後に、軽仮設リース業協会の会員会社に対して、新春にあたってのメッセージを。

 「東京五輪関連工事は今年がピークだが、その後も再開発やリフォームなどの仕事は当面出てくる。また、昨年日本列島を襲った自然災害の復旧・復興工事はまだ道半ばだ。まずは目先の仕事量に一喜一憂することなく、適正価格を維持しながら冷静に安全機材の安定供給に努めてほしい。その一方で、保有機材の入れ替えや労働力確保、機材センターの効率化など自助努力の投資も鋭意進めていく必要がある。協会も会員会社の抱える共通の課題や現場の声に耳を傾け、各種活動を通じて会員の事業をサポートしていく方針だ。協会活動に対する会員会社のさらなる協力をお願いしたい」

主要データから見る軽仮設リース業の動向/仮設機材、年間平均稼働率は60%超維持/18年平均月次売上げ、初の200億円突破

 35年前に「信頼と経験をもとに安全を守り合理化に寄与する」とのスローガンのもと発足した軽仮設リース業協会。会員に対して、様々な指標を提供しつつ業界秩序の維持、建設業の安全・安心に貢献してきた。同協会が提供する代表的な2つの指標、月次の機材稼働率動態調査、隔年で実施している機材保有量実態調査のデータから、軽仮設リース業の置かれている現状と今後の展望について見てみる。

 リース稼働率と賃貸売上高は、主要50社を対象に国土交通省がまとめた月次ベースの指標を事務局から毎月公表している。現行基準で調査を開始した2011年度以来、年間平均稼働率は60%超の高い水準を維持。直近18年(1~11月現在)の平均も62・2%となっている。東京五輪関連や首都圏を中心とした再開発、経年劣化によるインフラ補修・メンテナンス案件などの堅調な需要に支えられており、季節要因による多少の乱高下はあるものの、今後もしばらく高水準が続くと思われる。

 同時に算出されている賃貸売上高は、機材レンタル料のほかに付随する基本料や滅失料、破損・修理料、運搬費などを総合的に含んで算出。月次ベースの年間平均は11年以降わずかな増減はあるが総じて上昇傾向にある。直近の18年は、7月から11月まで5カ月連続で月次200億円を超えた。11月末時点での月次平均は200億6900万円となっており、調査開始以降初めて200億円台を突破している。

 機材保有量の実態調査は、会員会社へのアンケートをもとに1993年度から隔年で実施。これまでに通算13回行っており、直近は18年度版(調査対象期間・17年4月~18年3月末)の報告書が昨年11月に公表された。

 第13回調査(18年版)では、金額ベースでの仮設材保有量は6308億9300万円となり、前回の第12回調査(16年度版)に比べて1・6%増加し、過去最大となった。賃貸収入については2040億5400万円で、前回調査比3%増加。保有量増加率に比べて収入増加比率が高いことから、レンタル料金単価の改善、高付加価値・稼働効率の良い機材保有を増やす傾向が続いていることなどが伺える。

 近年、積載効率や複雑躯体形状への施工性などのメリットから、既存の枠組足場に代わってクサビ緊結式足場の需要が増えている。本実態調査でも第11回(14年度)調査から統計を開始。直近調査での保有量は570億5千万円で、14年度(316億4千万円)比約80%と急激な伸びを示している。今後、とび職がどれだけ組立解体に慣れて使用頻度が高まるかによって、需要動向も大きく変わってきそうだ。

 仮設機材メーカーに対する意見、要望については軽量化、省力化、耐久性に優れた機材開発を求める声が出てきた。また、現在各社でバラバラな規格の互換性を問題視する意見もあった。

 今回の調査では、仮設業界の現状調査の一環として「運輸業務の現状と問題点に関する実態調査」も実施。回答のあった会員のうち、95%近くが委託配送を利用しており(自社配送との併用を含む)、現時点でトラックのドライバー確保が困難との回答は全体の約6割にあたる44社に上った。委託費用の増加懸念と合わせて、今後機材の安定供給のために解決しなければならない至近の課題となっている。

 建築需要見通しから、今後しばらく堅調な需要が見込まれる軽仮設リース業。協会が提供する各種資料・指標は、「安全機材を適正価格で安定供給」するため各社が営業戦略を組み立てる有効なヒントが盛り込まれている。協会側も、会員会社のニーズに対応しながら調査・情報提供の継続に注力していく。

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